翻訳スキル向上のための5ポイント
「言語は生きている」と言われるほど常に変化し続けている言語を扱う翻訳業。翻訳者は、言語の変化に適応しつつ細心の注意を払って作業することが求められます。世界と時代が変わるにつれ、あらゆる言葉の意味や使い方は変化し、言葉が使われる場所や時で異なる意味を持つようになります。翻訳では、その場所、その時々で適切な言葉を選び取らなければなりません。そのため翻訳者は言語と共に成長し、 翻訳スキル を向上させていかなければなりません。今回は、翻訳スキルを向上させるために役立つポイントを5つ紹介します。
1.読む
広く認められ、かつ文脈に沿った内容がしっかり伝わる訳文を作るために最も大切なことのひとつは、できるだけ多くの外国語文書を読むことです。片時も辞書を手離さずに持ち運び、わからない単語を調べつつ、スキマ時間があれば辞書を「読んで」語彙を増やし続けるとよいでしょう。辞書は「引く」ものではなく「読む」ものと見方を変えることで、豊かな語彙力を育めるとも言われています。辞書を活用しつつ、たくさんの外国語を読みましょう。次に、可能な限り多くの地元紙、雑誌、書籍、出版物を読み、対象言語や研究分野に登場するトレンドやイベント情報、文化的ニュアンス、専門用語があればそれらを吸収するようにします。最後は、同僚や先輩が翻訳した文章をできる限り多く読み、業界で役立つヒントやコツをつかみましょう。
2.話す
ターゲット言語のネイティブスピーカーとできるだけたくさん会話をするようにしましょう。言語を学ぶのに、その言語の専門家やその言語を母国語とする人たちと頻繁に会話すること以上に良い方法はありません。さらに、ネイティブらとの会話はターゲット言語の口語や俗語(スラング)などのニュアンスを理解するためにも良い方法です。
3.専門知識を磨く
翻訳者の中には、専門分野を持つ、つまり特定の研究分野での専門知識を獲得してキャリアと評価を築く人もいます。特定の分野の資料の翻訳を該当分野の知識がある翻訳者に依頼したいと考える顧客や言語関連サービスを提供するLSP(Language Service Provider)に向けて、翻訳者自身の専門性をアピールすることは賢明な策です。履歴書を作成する際にさらに有効なのは、該当領域で学位あるいは認証を取得しておくことです。何らかの資格を有していれば、該当分野の有識者であると印象付けることもできます。
4.双方向翻訳にチャレンジする
翻訳作業に慣れているのであれば、訳出する言語の双方向翻訳にチャレンジしましょう。例えば、英語から他の言語に訳せるのであれば、他の言語から英語への翻訳をしてみます。言語ペア間で双方向の翻訳ができるようになれば、言語間の関係について理解が深まるだけでなく、スキルアップになり、さらに対応可能な作業の範囲を広げることができます。そうなれば、より多くの仕事を掴むチャンスにつながるでしょう。
5.CATツールを使う
翻訳者として仕事をするには、コンピューター支援翻訳(CAT)ツールに精通しておくことも必要です。CATツールは、翻訳作業のスピードを上げることで効率化を図るとともに、品質の向上に貢献するコンピュータープログラムです。訳文の一貫性確保、訳抜け防止にも役立ちます。頻出するフレーズや多くの意味合いを持つ語の訳語を画一化させることも可能です。また、プロジェクトに複数の翻訳者が関わっている場合、CATツールを使用することですべての翻訳者が標準化した語彙セットを使って作業できます。よく利用されているCATツールには、Linguee、SDL Trados、Fluency Now、MemoQなどがありますが、顧客によっては利用するツールを指定していることもあります。価格帯、顧客の要望、ファイル形式などを考慮し、自分に合うツールを選択してください。CATツールのような翻訳ソフトを使うことに慎重になりすぎず、ツールを使うことのメリットを考えてみることが大切です。
最後に、翻訳者が実質的な翻訳スキルを野心的に向上させたいのであれば、できるだけ頻繁に書き、翻訳することが最良の方法であると付け加えておきます。何を今さら?と言われそうですが、最も基本的なことです。報酬が得られる仕事以外でもよいので数をこなし、継続的にスキルアップしておくことで、仕事の依頼に備えておくようにしましょう。さらに、さまざまな情報を読むことに興味があれば、ネットで翻訳者向け、あるいは専門とする分野の最新情報などを収集しておくことも有用です。
翻訳には、言語の進化に合わせて、頭とスキルも進化させ続けてください。