アフリカ市場でビジネスチャンスを掴む
アフリカ市場への進出は、企業にとって大きな可能性を秘めています。2022年11月15日に国連が発表したレポートによると世界の人口は80億人を突破しました。このうち、アフリカの人口は14億あまり（世界全体の約18％）ですが、2050年までには24億人を超えると予測されています。この人口増加にともない、アフリカ市場は急成長しています。アフリカ市場で成功するためには、独自の文化や経済環境を理解することが重要です。
この記事では、アフリカ市場について概説し、この地域への進出を検討している企業のための戦略を紹介します。
アフリカ市場の概説：歴史、言語、人々の文化
アフリカ大陸には、1,000を超える民族が2,000を超える言語を使って生活しており、多様な文化、伝統、言語が豊かなタペストリーを織りなしています。
アフリカの歴史は長く複雑で、ナイル川流域の古代エジプトでは紀元前5,000年頃に灌漑農業が始まったとされています。以後、時代とともにさまざまな王朝、帝国、植民地が興廃し、そうして積み重なった歴史が現在のアフリカ大陸の文化的景観を形成してきました。
アフリカは市場という視点から見ても長い貿易の歴史を持っており、それはサハラ砂漠を縦断し、西アフリカと地中海沿岸、アラブ世界をつないだサハラ交易にまで遡ります。
今日、アフリカには経済成長中の国がいくつもあり、投資先や貿易相手として注目が高まっています。しかし、アフリカには依然として貧困、紛争、インフラ不足などの問題を抱えている国も多く、経済発展の妨げとなっているのも現状です。
言語面では、植民地支配の歴史の影響により、多くのアフリカ諸国で英語、フランス語、ポルトガル語などが公用語として利用されている一方で、アフリカの先住民族による言語も広く使われています。例えば、ベルベル語、アムハラ語、オロモ語、イボ語、スワヒリ語、ハウサ語、マンディング諸語、フラニ語、ヨルバ語などの言語が民族内でのコミュニケーションに広く使われており、文化的アイデンティティの保持に重要な役割を担っています。
アフリカの豊かな言語と文化の多様性は、そこに住む人々の大きな誇りであり、大切な伝統の一部であり続けているのです。
アフリカ大陸の可能性
アフリカには、大きな成長の可能性を秘めた新興産業が数多く存在しています。有望な産業分野をいくつか挙げてみましょう。
技術
アフリカでは技術（テクノロジー）分野の産業が急成長しています。大陸の広い範囲で新興企業や、イノベーションハブ（核心的な製品やサービスなどを生み出して市場展開するための知恵や技術を有するイノベーションが集まる基盤）の数が増加し、技術革新が進んでいます。
例えば、ケニアで普及が進んでいるモバイル送金・決済サービスM-PESA（エムペサ）のようなモバイルテクノロジーと、インターネットアクセスの成長が重要な推進力となっています。
農業
農業はアフリカの多くの国々で重要な産業であり、何百万人もの人々に雇用と食料の安定を提供しています。
この分野は、新しい技術や投資の後押しにより急速に成長しており、収穫量の増加や効率の向上が図られています。
ヘルスケア
アフリカでは、人口の増加や都市化に伴い、医療サービスに対する需要が急速に高まっています。
国連のアフリカ経済委員会（Economic Commission for Africa：ECA）によれば、アフリカの医療部門は年間660億ドルの規模に達しており、2030年には、2,590億ドル規模になると予想されています。
この分野では、医療技術、医薬品、医療ツーリズムなどに投資の機会があります。
再生可能エネルギー
アフリカ大陸の慢性的な電力不足が、ビジネス展開を考えている企業にとって制約要因のひとつとなっていますが、アフリカには、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギー資源が豊富にあります。
しかし、これまでアフリカの大部分では、エネルギー転換が進んできませんでした。過去20年間にアフリカにおける再生可能エネルギーへの投資は、世界全体のわずか2％であり、地域間格差が顕著に出ています。また、アフリカにおける再生可能エネルギーの導入にともなう雇用機会の割合は世界の3％未満に過ぎません。2019年、サブサハラ・アフリカの電化率は46％に留まっており、依然として9億600万人がクリーンな調理用燃料や技術にアクセスできずにいます。
再生可能エネルギー資源の開発を進めることは、アフリカの人々にクリーンなエネルギーを提供し、エネルギーの貧困問題の解決に貢献する可能性を持っています。
インフラ
アフリカでは、交通、エネルギー、通信などのインフラへの大規模な投資が必要です。
インフラ整備は、アフリカ大陸の経済成長を促し、人々の生活の質を向上させるために不可欠です。
アフリカ市場に進出するメリット
アフリカ市場に進出することは、企業にとって次のようなメリットがあります。
大規模で成長中の消費者市場への参入
アフリカの消費者市場は、大規模な成長を続けているので、この市場にビジネスを展開することは、新たな顧客を開拓し、収益を上げるチャンスです。
ビジネスの多角化
アフリカへの進出によってビジネスを多角化することで、単一市場への依存度を下げ、経済または市場特有の課題の影響を軽減することができます。
豊富な天然資源
アフリカは天然資源が豊富なので、企業は新しい資源を獲得することができ、他の供給地域への依存を減らす（リスク分散する）ことができます。
国連によると、世界の鉱物資源の約30％、石油資源の約12％、天然ガスの約8％、さらに金の約40％、貴重な金属であるクロムとプラチナも90％ほどがアフリカ大陸に存在しているとされています。
成長する経済
多くのアフリカ諸国で経済成長が続いているので、企業にとって新規ビジネスを参入させ、収益を拡大するチャンスです。
アフリカは今後2年間、経済成長の面で世界の他の地域を上回り、2023年と2024年の実質GDP（国内総生産）は平均で約4%になると予想されています。
投資家にとっては、アフリカの経済圏への投資を行う良い機会と言えます。
新製品を投入する市場としての魅力
アフリカの消費者は独自のニーズや嗜好を持っているため、企業が新製品を開発・販売し、競合他社と差別化できる可能性を秘めています。
アフリカ市場で成功することが期待できる製品の中には、モバイル金融サービス、再生可能エネルギー製品、農業技術、ヘルスケア製品、テクノロジー製品、水と衛生に関する製品などがあげられます。
こうした製品やサービスは、企業が顧客基盤を築き、新しい収益源を生み出すことになるでしょう。
企業にとってより収益性の高い国々
アフリカで最も収益性の高い地域は、業種や特定のビジネスモデルによって異なる場合がありますが、一般的なビジネス展開において収益性が高いと見られているのは以下の国々です。
南アフリカ
南アフリカは経済が発展しており、消費市場も大きいため、多くの企業にとって魅力的な進出先となっています。
また、同国には鉱業、農業、製造業などの主要産業があるので、それらの分野に進出する企業にとってはビジネスチャンスとなるでしょう。
ナイジェリア
ナイジェリアはアフリカ最大の経済規模を持ち、2億人を超える人口を抱える巨大市場として注目されています。ナイジェリアの国内総生産（GDP）はアフリカ最大（2020年、4,294億ドル）で、世界で最も急速に経済が成長している国の一つです。
石油やガスなどの天然資源が豊富に存在する上、消費市場が急成長しているので、企業にとって魅力的な市場といえます。
モロッコ
モロッコは戦略的な経済発展を進めており、立地的にもアフリカとヨーロッパ両方の市場にアクセスしようとする企業にとっては魅力的な国です。
工業製品の製造が発展しており、再生可能エネルギーやテクノロジー企業の拠点となりつつあります。
エジプト
エジプトは、消費市場が大きく成長していることに加え、インフラが整備され、投資環境も整っています。観光、農業、製造業など、いくつかの主要産業の拠点となっており、企業にとって魅力的な進出先となっています。
ケニア
ケニアは東アフリカで最も経済的に発展した国の一つであり、この数年間に消費者市場は急速に拡大しています。
ケニアは、東・中央アフリカにおける、経済、商業、物流の拠点となっており、東アフリカ地域における優良な投資先と見られています。アフリカのスタートアップ企業への投資額は年々増加傾向にありますが、特にケニアへの投資は南アフリカに次いで大躍進を遂げています。
まとめ
アフリカ大陸は、事業の拡大を目指す企業にとって大きなチャンスを秘めています。成長する消費者市場、良好な人口動態、改善が進むビジネス環境、豊富な天然資源などは、アフリカ市場に参入しようとしている企業にとって魅了的です。
アフリカ市場にはさまざまなビジネスチャンスがあり、企業がチャンスをつかむための選択肢も多数あります。しかし、企業がこのダイナミックで急成長中の国々や地域で新たなチャンスをつかむには、ターゲット国・地域の文化的なニュアンスを理解することから、膨大な天然資源の活用する方法まで、検討課題も多いため、綿密な計画を立てて、戦略的に準備・実行することが必要です。
課題は多いものの、現地の言語、文化、習慣を十分に理解することについては、言語のプロの助けを借りることができます。アフリカ市場への進出する際の、翻訳やウェブサイトのローカライズや通訳が必要な時には、是非クリムゾン・ジャパンにご相談ください。アフリカ市場への進出をサポートします。
