ウェブ翻訳ですべきは翻訳プロキシの導入か、CMSの統合か

ビジネスをグローバルに展開する上で、今やウェブサイトの多言語化は不可欠です。多言語サイトの開発と管理にはさまざまな方法があり、どのように始めれば良いか悩まれる方もおられるでしょう。

ウェブサイトの多言語化でまず決めなければならないことの1つが、シームレスで効率的でありつつ、正確な翻訳を可能にするためのインフラの構築です。

ここでは、翻訳プロキシ、および、コンテンツ管理システム (CMS) の統合という、ウェブサイト翻訳を円滑に行うための2つの方法について説明します。それぞれに、サイトのパフォーマンスに影響するメリットとデメリットがあるので、翻訳会社あるいは言語サービスプロバイダ(LSP)と共にさまざまな可能性を検討し、最適な方法を選んでください。

翻訳プロキシのメリットとデメリット

翻訳プロキシとは、原語のコンテンツが格納されているウェブサイトとエンドユーザーの中間に位置する中継サーバーを介して、エンドユーザーが閲覧したいサイトのコンテンツをユーザーの地域やドメイン環境に応じて翻訳表示させるシステムです。翻訳プロキシは、過去に作成された翻訳メモリを活用し、基となるウェブサイトに「翻訳レイヤ」を重ねていきます。こうして、さまざまな国のユーザーがサイトにアクセスしても、コンテンツがサイト訪問者の母国語に翻訳されて表示されるのです。原語サイトに新しい情報が追加されると、プロキシが自動的にその情報を識別して翻訳するので、効率的に世界中のユーザーを引き寄せることができます。

プロキシの導入には、以下のような企業のニーズに対応できるメリットがあります。

  • 追加的な品質管理の工程なしに翻訳ができるため、コンテンツ管理システム(CMS)の統合に比べて翻訳プロセスに要するコストは手頃に、時間は短くなる。
  • プロキシは、特にデザインや機能に多くの変更を必要としない静的ウェブページに有効で、高いコスト効率と作業効率が期待できる
  • 翻訳プロキシは実装が比較的容易なため、新規開拓する多言語マーケティング戦略を試すにあたって、よりコストのかかる翻訳方法を選択する前に実施できる手段のひとつとなりうる
  • 翻訳プロキシを導入すれば、翻訳会社・LSPに自社のスタイルガイド(書式要項)やソースファイルを提供したり、さまざまな作業指示を出したりする必要がなくなるので、プロセスを簡略化できる

一方、翻訳プロキシには、以下のような多くのデメリットもあります。

  • 翻訳プロキシは基本的に静的なウェブコンテンツの翻訳に適しているものなので、製品推薦やパーソナライズ(個別カスタマイズ)情報、および動的コンテンツの更新が必要なサイトには向いていない
  • 地域ごとのコンテンツに少しでも差別化が必要な場合、翻訳プロキシを利用するとコストが割高になることがある
  • 翻訳レイヤは一部のコンテンツで翻訳漏れを起こす可能性があり、結果としてユーザーが閲覧する画面に複数の言語が混在した状態が表示される場合がある
  • 翻訳プロキシを導入するには、企業は自社のサイト管理を外部サービスに委託することとなり、委託先のサーバーにパフォーマンスの問題やダウンタイムが生じたりすると、ウェブサイトに悪影響が及ぶ

コンテンツ管理システム (CMS) の統合のメリットとデメリット

翻訳プロセスを管理するためのアプローチとして人気を集めているのは、CMSの統合です。これにより、ソースコンテンツを翻訳会社・LSPの翻訳管理システムに送信したり、自社のサーバーにファイルを戻したりする作業が容易になります。

CMS統合ソリューションには、次のようなメリットがあります。

  • CMSを導入することで、語調やレイアウト、色使い、ページのスタイル、翻訳プロセスで使用する用語集などを含む翻訳作業における柔軟性が大幅に向上する。また、企業側がウェブコンテンツの公開前後に自社サーバー上の該当コンテンツを必要に応じて変更できる
  • CMSの統合により、世界各地の複数のチームがサイトのローカライズを共同で行うことができる
  • CMSの統合により、ターゲット地域ごとに固有のコンテンツを作成しCMSにアップロードできるため、ターゲットに合わせたマーケティング戦略の実施が可能になる
  • 最新のテクノロジー (新しい動画や、ファイル形式、機能、アプリなど) を盛り込むことで、サイトを最新の状態に保ち続けることができる

とはいえ、翻訳プロキシと同様にCMSの統合にも次のようなデメリットがあります。

  • CMSの統合は、主にサーバーの設定、設計、サーバー間でのコンテンツを移す際のプロセス管理にコストがかかるため、翻訳プロキシを導入するソリューションに比べて費用がかさむ
  • 複雑な多言語サイトを管理する場合、作業効率が悪くなり、手動作業が必要になることがある。このため、多言語サイトのコンテンツの相互同期ができないこともあり得る
  • 多くの大規模企業は自社サイトの情報を定期的に更新しているが、コンテンツ管理システムの多くは、翻訳者やサイト管理者に変更内容を自動的に通知するようになっていないため、各国語のサイトに変更が正しく反映されずにエラーを発生させることがある
  • CMSの統合には多くの品質チェック工程が組み込まれていることがあるため、エラー修正のプロセスにはコストと多大な労力を要する可能性がある

ウェブサイトのローカライズというとハードルが高いかもしれませんが、最初に、自分たちにとって必要な方法を見極めることがプロジェクトの成功につながります。適切な翻訳会社・LSPと連携してニーズに応じた多言語サイトを構築することが、世界中から新たなチャンスを引き寄せることにつながるでしょう。

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