eラーニングのローカライズ: 最も重要な課題は何か?それをどう克服すべきか?

eラーニングは活況を呈しています。推計によると、eラーニングの現在の市場規模は約3,000億ドルです。また、2030年までに約8,500億ドルになる可能性があると予測されています。今後の年平均成長率は19%と推定されており、最も急成長が見込まれる産業のひとつと言えるでしょう。eラーニングの最大の特徴のひとつは、まさにグローバルなことです。学習において、言語や物理的な距離はもはや制約になりません。企業は、eラーニングによって、様々な言語を話し異なる文化的感覚を持つ従業員たちに同じ内容を受講させることができ、一貫性を確保できます。多くのeラーニング提供企業にとって、eラーニングのローカライズは特に重要です。どの言語でも、すべての人に質の高い豊かな体験を確保するためです。

eラーニングのローカライズは、ほとんどの場合、ウェブページ上の語句の翻訳にとどまりません。eラーニングの内容には特有の複雑さや細かな意味合いがあります。全員がその内容を最大限に活用できるようにするには、この複雑さや細かな意味合いを理解することが不可欠です。eラーニングのローカライズにおける課題とその克服方法について知っておく必要があることをご説明します。

eラーニングのローカライズはどう違うのか?

すでに述べたように、eラーニングのローカライズには、逐語的な直訳では効果がない表現が多く含まれています。その理由は、内容自体と、想定される利用者にあります。

この事例を考えてみましょう。たとえば、貴社が食品会社で、子どもが牛乳を飲む利点 (カルシウムを摂ると骨が丈夫になり、その他の点でも健康によい) に関する英語のeラーニング講座を作成しているとしましょう。この講座では、牛乳の消費の促進に成功した広告の例として、米国で広く見られる「Got Milk?」(牛乳飲んだ?) という広告に言及しています。

この「Got Milk?」をスペイン語に直訳すると、「¿Tienes leche?」になります。しかし、メキシコでは、この表現の意味が異なります。「¿Tienes leche?」という質問は、基本的に、その人が授乳中かどうかを尋ねるものです。これは、貴社のeラーニング講座の受講生に学んでほしいことではありません。

あり得ないと思われるかもしれませんが、実際にそうなのです。この広告の制作チームがスペイン語を話す人々に訴えるためには、表現を変える必要があります。

別の事例として、自動車、飛行機、列車、コンピューター、またはその他の機器の特定の部品で、高い精度が求められるものに関するeラーニング講座を考えてみましょう。100%の正確さで翻訳されていない語句は、重大な問題をもたらしかねません。さらに、子ども向けの講座では、文化に関わる様々な感覚を尊重する必要があります。

eラーニングのローカライズは、他のローカライズよりも正確でなくてはいけません。なぜなら、学習のためのものだからです。

ローカライズはなぜ必要か?

企業の中には、落とし穴ができる可能性を意識して、ローカライズを行わないという安全策を取ろうとするところもあります。しかし、この世界の多様性に対応し、市場を拡大するには、ローカライズがきわめて重要です。

複数の市場に展開したいのなら、ローカライズを行う必要があります。英語は世界で最も広く使われている言語ですが、英語だけで情報を提供しても、それが届くのは世界人口の約18%に限られます。世界人口の50%に情報を届けるには、いくつかの言語にローカライズを行う必要があります。統計としては、英語・中国語・ヒンディー語・スペイン語・フランス語にローカライズすると、合わせて世界人口の50%以上になります。

この世界は非常に多様化しているため、国際展開を考えていないとしても、ひとつの言語で情報を提供するより、複数の言語にローカライズして提供したほうが効果的であるのが一般的です。たとえば、ニューヨークに住む人のうち、家庭で英語を話すのは約50%だけです。ニューヨークの住民向けに新型コロナウイルスに関するeラーニング講座を作成するとしたら、様々な言語で作成しなければすべての住民には届きません。

ローカライズは、多くの場面できわめて重要です。eラーニング講座の開発過程において、様々な言語への対応を検討すべきことはよくあります。

eラーニングのどの要素をローカライズすべきか?

eラーニングの教材の多くは、他の媒体と違って、単に受動的に消費されるわけではありません。多くのeラーニング講座は、複数の進め方、双方向の要素 (理解を確認するための小テストなど)、および様々な概念を説明する動画を提供しています。これらの教材をローカライズする際には、どの要素のローカライズが必要なのかを理解することが非常に重要です。

ほとんどの講座では、少なくとも下記の要素のローカライズが必要です。

  • 文章の内容:文章の内容: 見出し・指示・評価を含めて、すべての文章は、提供する全言語で書かれていなくてはいけません。画像に代替テキストなどのアクセシビリティ機能が含まれている場合は、それもローカライズする必要があります。
  • 文章の内容: 見出し・指示・評価を含めて、すべての文章は、提供する全言語で書かれていなくてはいけません。画像に代替テキストなどのアクセシビリティ機能が含まれている場合は、それもローカライズする必要があります。
  • マルチメディア: すべての音声、動画の字幕、および画面上にあるその他の文章は、提供する全言語で作成すべきです。
  • 双方向の要素: ローカライズの作業には、小テスト、試験、およびその他の練習問題といった双方向の要素も含めなくてはいけません。
  • ユーザーインターフェイス: メニュー、ボタン、またその他の操作対象を考慮することも必要です。
  • 視覚効果: 画像、アニメーション、シミュレーション、あるいはコード内のコメントがある場合は、それらも翻訳しなくてはいけません。eラーニングの講座を設計する際には、ローカライズが必要なすべての内容を把握することが重要です。そうすれば、すべての内容を適切に翻訳しやすくなります。

ローカライズの際によく遭遇する課題

eラーニングの内容をローカライズする際には、多くの人が様々な課題にぶつかります。ここでは、eラーニング提供企業がその製品を異なる言語や市場に合わせようとする際に遭遇する課題として、上位5つのものをご説明します。

  • ユーザー体験: 様々な言語や文化にわたって一貫性のある魅力的なユーザー体験を維持するのは難しい場合があります。たとえば、ユーモアや口調の翻訳がうまくいかないことがあります。注意して翻訳先の文化に合わせるべきです。
  • 言語と文化に関する課題: 言語の細かな意味合い、文化への言及、および学習方法は、eラーニング講座の効果に大きく影響する可能性があります。たとえば、色、記号、またジェスチャーは、それぞれの文化で異なる意味を持つことがあります。
  • コンテンツデザインの課題: 文章の長さは、eラーニング講座のレイアウトに影響を与える可能性があります。たとえば、英語をドイツ語に翻訳すると、文章が長くなることが多く、デザインの調整が必要になります。
  • 品質保証とバージョン管理: 複数の言語やバージョンにわたって、ローカライズした内容の正確さと一貫性を確保することは、作業上の課題になり得ます。
  • マルチメディアのローカライズ: 音声・動画および双方向の要素を文化に合わせて翻訳することは、複雑で時間のかかる作業になる場合があります。音声と動画を一致させることは、マルチメディアのローカライズにとってきわめて重要です。

eラーニング講座の内容 (視覚的要素のレイアウトを含む) を設計する際には、ローカライズを念頭に置いて、上記5つの最重要課題を検討してください。たとえばドイツ語のように、英語より長文になる言語の場合、ユーザーインターフェイスの見た目が大きく変わってくる可能性があります。英語では素晴らしく見えるものでも、ドイツ語のような言語では、文章が切れたり、枠からはみ出してしまうかもしれません。

eラーニングをローカライズする際のベストプラクティス

ローカライズには多くのベストプラクティスがありますが、おそらく最も重要なのは、早い段階でローカライズの計画を立てることと、ネイティブスピーカーを校正に参加させることの2つでしょう。

この例を考えてみてください。あなたが動画を含むeラーニング講座を計画しているとします。その際、動画の作成を外注しました。動画作成者は、題名、字幕、説明文などが付いた完成品を納品しました。映像は素晴らしいものでした。

ただ、問題がひとつだけあります。動画を後日ローカライズするには、かなりの量の編集が必要になる、という問題です。動画の題名、説明文、およびその他の文章についてはどうでしょうか?あなたが持っているのは完成品だけなので、ローカライズするには大幅な編集や音声の吹込みを行わねばならず、最初のものより見栄えのしない動画になってしまうかもしれません。

早い段階でローカライズを行えば、この問題を完全に回避することができるでしょう。動画のすべての構成要素をローカライズして、各言語の動画を作成することができます。

さらに、ネイティブスピーカーを校正に加えることも重要です。ある言語を大人になって学んだ人の多くは、その言語で育った人が身につけている意味合いすべてを知っているわけではありません。そのため、ネイティブスピーカーの視点を用いることは、品質保証にとってきわめて重要です。

eラーニングのローカライズ: まとめ

現代の多様な世界において、eラーニングのローカライズは、質の高い商品を作るために不可欠です。市場を拡大するにしても、特定の地域でより多くの人々に響く教材を開発するにしても、ローカライズはeラーニングの効果を高めるのに役立ちます。貴社のeラーニングで学ぶ従業員、一般顧客、およびその他の利用者は、学習する際に言葉の壁がないことに、間違いなく感謝するでしょう。

クリムゾン・ジャパンの専門のひとつは、eラーニングのローカライズです。画像、スマートフォン用アプリ、電子書籍など、すべてのeラーニング教材をローカライズします。

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