動画の翻訳・ローカライズ:成功のための5ステップ

企業の新しい顧客獲得、売上の増加、国際的な認知度の向上につながる動画の翻訳・ローカライズ。海外展開のために動画のローカライズを成功させるための5つのステップを解説します。

動画の翻訳・ローカライズ:成功のための5ステップ

動画の視聴者数は世界的に増加し続けており、動画コンテンツをローカライズすることで得られるビジネスチャンスを逃す手はありません。動画コンテンツを翻訳・ローカライズすることは、企業にとって新しい顧客や、より多くの売上の確保、国際市場での知名度アップにつながります。

ここでは、国際市場に向けた動画の翻訳・ローカライズを成功させるための5つのステップを解説します。

ステップ1:目的と戦略の設定

動画のローカライズの最初のステップは、目的と戦略を明確にすることです。当たり前のように思われるかもしれませんが、見落とされがちです。具体的な目的を明確化せずに、ローカライズを始めてしまう企業が珍しくないのです。
以下の項目に沿って、ローカライズの計画を立ててみてください。

  • ターゲットオーディエンスを明確にする 費用対効果の高い地域を探ります。競合他社が進出していない市場や、購買層が存在しそうな地域、自社が認知されている地域などが候補となるでしょう。
  • 視聴者の視聴習慣を調査する 参入する新しい市場を決めたら、対象地域の人々の視聴習慣を調査します。例えば、視聴者がどのぐらい動画を見たところでクリックするか(誘導先に飛ぶか)などの動画の視聴習慣に関する情報は動画のローカライズ戦略を策定する際の材料となります。
  • プロジェクトチームに必要な人材を決める プロジェクトチームには、プロジェクトマネージャー(管理者)、翻訳者、動画や音声編集スタッフなどが必要です。そうした人材を揃えられる動画のローカライズで実績のある会社に依頼するのが得策です。
  • 動画をローカライズする目的を考える。動画のメッセージは、ブランドのプロモーションなのか、特定の製品やサービスの販売なのかによって異なるので、最初に目的を定めておくことは重要です。
  • ターゲット地域で一般的な視聴方法を調べる。ターゲット地域では動画がどのようなデバイス(スマホ、タブレット、パソコン、テレビなど)で視聴されているか、一般的な傾向をつかんでおくことは有益です。
  • ローカライズ戦略全体に合致した動画になっているかを確認する。動画だけでなく、ローカライズ予定のウェブサイトやマーケティング素材、ソフトウェア、アプリなどを含めたすべての要素に一貫性があることも重要です。
  • 動画の中のローカライズが必要な要素を洗い出す。ローカライズのために変更が必要なすべての要素を事前に洗い出しておくことで、見落としがないようにします。

この段階であれば、計画の見直しや変更は簡単ですので、余裕を持ったスケジュールで計画策定に臨むようにしてください。プロジェクトが動き出して、費用が投じられる前に、戦略を見直しておくことをお勧めします。

ステップ2:動画コンテンツの翻訳とローカライズ

次は、動画コンテンツの翻訳とローカライズ作業です。このステップでは以下の作業を行います。

  • 動画内のすべての会話や、画面に表示される文字なども含めたあらゆるテキストを翻訳する。正しく自然な訳文にするには、ターゲット言語のネイティブスピーカーが翻訳作業を担当する翻訳会社や言語サービスプロバイダ(LSP)に依頼します。
  • 言語ごとに異なるあらゆる数の表記方法(日付、時間、住所、距離、重量、温度の単位など)をローカライズする。
  • ターゲット地域に合わせた画像、図、色、アニメーションなどのローカライズを行う。動画のローカライズを容易にするためには、オリジナル映像内に書き換えが必要となるような文字の使用は避けます。
  • 文化的背景への配慮 ターゲット地域の視聴者に不快感を与える可能性のある要素を適宜修正します。文化に関するもの、政治的なもの、言葉遣いなどがこれに相当します。

ステップ3:字幕とキャプションへの対応

ターゲット言語の視聴者に動画の内容を理解してもらう上で費用対効果の高い手段が、字幕またはキャプションを付けることです。

  • 字幕 動画の画面上に、翻訳した会話やナレーションを表示するもの。翻訳したテキストをそのまま画面に追加表示するので、動画のローカライズとしては最も効率的な手法のひとつです。編集が簡単で、音声収録や編集などの追加作業が少ないため、コストを抑えられるメリットもあります。一般的には字幕付きの動画が好まれる傾向にあり、この数年で、字幕付きの動画が増えています。
  • キャプション 視聴者の設定で表示/非表示を選べるクローズド・キャプション(CC)は、元は聴覚障害・難聴の人のために開発されたものです。現在では、音を出せない環境などでキャプションをオンにして動画を楽しむ人もいます。
  • 字幕やキャプションは、音声を文字情報として表示するものなので、翻訳するにあたっては自動音声認識ツールの利用、機械翻訳や翻訳者による翻訳作業を組み合わせることで効率化することが可能です。

ステップ4:吹き替えとボイスオーバーへの対応

音声を別の音声で置き換える場合には、吹替えやナレーションの準備が必要となります。翻訳された台本をターゲット言語の声優もしくはナレーターが読み、映像に合わせて入れ込む作業です。吹き替えは、元言語の音声の調子や感情も含めて置き換えることで、より元言語で視聴したのに近い印象を創り出すのに対し、ボイスオーバーは映像を補完するナレーションといったニュアンスが強いものです。

それぞれについて簡単に見ていきましょう。

  • 吹き替え 吹き替えでは、ターゲット言語で収録した音声を、オリジナル版の音声と置き換えます。吹き替えでは、収録や編集といった作業が付加されるため、字幕に比べて制作コストが高くなります。それでも、字幕より吹き替えが好まれる地域もあるので、ターゲット地域の市場を踏まえて判断するのがよいでしょう。
  • ボイスオーバー ボイスオーバーとは、画面に登場しない話者やナレーターの音声を会話とは別の音声トラックに追加する作業です。日本ではニュースなどで、外国人発話者の音声を残して翻訳された音声を重ねるボイスオーバーの手法が用いられますが、会話形式ではない視覚情報がメインの動画に適しています。ローカライズ対象の動画がオリジナル言語のナレーションコンテンツのトラックがある場合には、他の言語に置き換えることはそれほど難しくありません。

ステップ5:編集、テストの実施

コンテンツがすべて翻訳され動画に組み入れられた段階で、編集およびテストを行います。動画コンテンツの翻訳・ローカライズを行う会社と協力していれば、すべての構成要素が的確に処理されていることが確認できるでしょう。
この最終段階では、以下のような作業を行います。

  • 動画コンテンツの翻訳(字幕)の挿入や音声の同期におかしなところがないかの確認 動画におかしなところがないか、対処すべき問題がないか徹底的に確認します。動画編集者が技術面での確認を行い、翻訳者はコンテンツの確認を行います。
  • 文化的に不適切な表現、意味が変わってしまっている箇所がないか 文化的に適切でない要素は大きな問題となるため、チェックは非常に重要です。すべての要素をさまざまな面から確認し、ターゲット地域に文化的に受け入れられるかどうかを検証します。
  • 動画テスト 動画にインタラクティブ(双方向)な要素が含まれている場合、そうした機能が正しく動作するかの確認を行います。
  • 検索エンジン最適化(SEO) 字幕、台本、説明のキーワードを戦略的に使って、動画が検索エンジンで簡単に見つけられるように(ヒット率を高めるように)します。

動画の翻訳・ローカライズは、コンテンツや製品をより多くの人々の目に触れさせるため、世界市場を視野に入れたビジネスでは不可欠なものとなっています。言葉や文化の異なる視聴者の心にうまく響くようにするには、実績と専門性のある翻訳会社・言語ザービスプロバイダ(LSP)を利用することをお勧めします。

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