最適な通訳会社を選択するために

通訳会社の選択は簡単ではありません。通訳は違う言葉を使う人とコミュニケーションを図るための要となるため、用途や内容に最も適した会社を選ぶ必要があります。インターネットで「通訳会社」を検索して出てきた会社にそのまま依頼するのではなく、しっかりと吟味した上で選び出すことが大切です。

ここでは、通訳会社を選択する際に確認しておくことを解説します。

サービスの選択肢

まず初めに、どのような通訳が必要なのか、その通訳サービスが提供されているかを確認します。多様なサービスの中から、ニーズに合わせて柔軟な対応をしてくれる通訳会社が理想です。

状況に応じて必要な通訳サービスには次のようなものがあります。

  • 電話通訳。電話の会話を通訳する場合、話し手が話を適宜中断して、その間に通訳者が他方の言語に内容を訳する逐次通訳が用いられます。電話通訳は、必要なときだけ利用するので、他の通訳に比べて低コストです。言語の異なる話者間で急な打ち合わせをするような場合などは、電話通訳が最適な選択でしょう。
  • ビデオ通訳。電話通訳と同様、必要な時にリモートでサービスを利用することが可能です。通訳者にはパソコンやタブレット、スマートフォンから会話の場(プラットフォームやアプリ)に参加し、話者の会話を通訳してもらいます。リモート診療など、顔を見て会話をするのが望ましい場面で活用されます。
  • 対面通訳。対面での通訳が必要な状況も数多くあります。特に、複雑で繊細な話をする場合、話者が直接会ってコミュニケーションを取ることが理想です。対面通訳が必要とされる場としては、事前に準備された会合やコンサルティング、予約された面談など、多岐にわたります。
  • 会議通訳。会議通訳を依頼する場合、通訳者が大人数を対象とする通訳経験を持っているかが重要なので、そうした経験のある通訳者を手配できる会社を選ぶようにします。もちろん、どのようなタイプの通訳でも経験は必要ですが、大規模なワークショップやカンファレンス(会議)で通訳をする際には、一般的な会話を通訳するよりも多様な作業への対応が必要とされます。多くの場合、話を遮ることなく、話者または演者が言葉を発するのと同時に他の言語にしていく同時通訳が求められます。
  • カスタマイズ通訳。通訳の依頼者が個人か法人かに関わらず、案件ごとに要件は異なるものです。依頼者のさまざまな要望に合わせて通訳サービスをカスタマイズしたい場合には、対応できる通訳会社を選ぶ必要があります。カスタマイズ通訳が必要な場合には、あらゆる角度から要望を検討し、通訳会社がそれらに対応できるか見極めることが大切です。
  • 通訳者に求める資質

    通訳サービスの選択肢とともに重要なのが、通訳者の資質です。依頼内容によって多少の差は出てきますが、以下のような資質を有する通訳者を手配できるかどうかを確認しておきます。

    分野に応じた専門知識

    通訳者には、通訳する内容の専門知識が求められことがあります。用語や概念を理解していなければ、誤ったメッセージを伝えることになりかねません。高度に専門的な分野や、誤訳が深刻な結果につながるような内容について通訳する場合は特に、専門知識を有する通訳者がいるかどうかが重要です。例えば、医師の指示を通訳するのは、医療用語を理解できなければなりませんし、司法関係の通訳にも、法律用語の知識が不可欠です。依頼する内容や緊迫度合いによって、どの分野の、どの程度の専門知識を持つ通訳者が必要なのかを事前に確認しておき、そうした要望に適合する通訳者がいる会社に依頼するようにしましょう。

    両言語のネイティブまたは同等の言語能力

    通訳者には専門知識だけでなく、両方の言語の高い語学力が必要です。両言語のネイティブ、またはネイティブ並みの言語能力(語彙だけでなく語感も含む)を持っている通訳者でなければ、会話の中のユーモアや言及、ニュアンスなどをその場で上手く伝えることはできないでしょう。対話を滞りなく続ける上で、両方の言語に対する通訳者の感覚も重要なのです。

    資格と専門的なトレーニング

    依頼する通訳がどのような資格を持ち、どの程度の訓練と経験を積んでいるかを確認しておきます。十分な訓練を受け、実務経験豊富な通訳者が理想ですが、実務経験が豊富な通訳者であっても、専門的な訓練を受けていないために間違いを犯してしまうことがあります。反対に、専門的なトレーニングを受けていても、実務経験が乏しい場合、現場での臨機応変な対応が難しい場合もあります。

    文化的背景への理解

    ある言語に堪能であるということは、単に文法的なルールを理解しているということではありません。言葉の背景にある文化的な側面やニュアンスを把握できるということでもあります。可能であれば、通訳者がどの程度、文化的配慮をできるのか確認しておきましょう。候補者と事前に話したり、その通訳者・通訳会社に対するレビューを読んだりすることで、ある程度知ることができます。

    一貫した品質を保つ能力

    通訳サービスを利用すれば、コミュニケーションにおいて質の高い意思疎通が図れると思いがちですが、言葉が分かれば何も問題はない、と考えるのは早計です。翻訳についても言えることですが、一つの言語を別の言語に置き換えるというのは、それほど単純な話ではありません。話し言葉であれ書き言葉であれ、言語というのは複雑な要素の集まりです。それを正確に伝え、一貫した品質を保つため、通訳者には、知識や技能、集中力、そして明瞭に発話する能力が必要です。

    通訳者に必要とされる高いコミュニケーション能力

    通訳者に求められる高いコミュニケーション能力とはどのようなものか、具体的に見てみます。

    • 優れたリスニング能力。通訳者に欠かせないスキルのひとつが、優れたリスニング能力です。発話されたすべての単語やフレーズを聞き取り、素早く理解する必要があることはもちろん、発話者のメッセージの意図を確実に他の言語で伝えられなければなりません。瞬時に自然な訳にして発話するために優れたリスニング能力(よく聞く能力)は必須です。
    • 臨機応変な対応力。 会話とは、どう進むか分らないものなので、プロの通訳者には素早い思考力や対応力が求められます。どのようなレベルの会話にも対応し、話題が変わっても対応できるのが、熟練した通訳者なのです。
    • 卓越した記憶力・集中力。通訳は、翻訳と異なり、調べたり翻訳ツールを利用したりする時間がありません。リアルタイムで訳出していく必要があるため、卓越した記憶力と集中力が求められます。こうした能力なくしては、訳漏れや誤訳が生じてしまうのです。

    情報のセキュリティ管理(守秘義務制約)

    通訳する内容に外部に漏洩してはならない情報が含まれる場合、通訳会社の守秘義務規定を確認しておくことが非常に重要です。通訳者は、依頼者に関する情報や、業務上知り得た情報を第三者に漏らさないことを明記した秘密保持契約書に従う必要があります。

    どのような内容であっても、通訳作業中に知り得た情報を外部に漏洩することは許されませんが、機密性の高い情報の扱いおよびセキュリティ管理はより重要です。例えば、患者と医師のコミュニケーションで通訳を利用する場合、その情報が外部に漏れてしまう不安があってはなりません。また、重要な金融取引で通訳を利用する場合、通訳者が絶対に競合他社やメディアに情報を漏らさないという確証が必要です。

    料金の透明性

    通訳サービスの価格設定方法は、会社によって大きく異なります。どのような通訳サービスを選択するか、使用するシステム、内容・分野にかかわらず、サービス内容と費用が明快な通訳会社を選ぶべきです。参考までに、通訳料金を左右する要素を以下に挙げておきます。

    • 通訳サービスの種類。 リモート対応する電話通訳やビデオ通訳と、会場に出向いて行う会議通訳では料金が異なります。一般的には電話通訳が最も安価で、その次がビデオプラットフォームを利用したビデオ通訳ですが、通話時間や言語ペアによっては費用が変わってきます。会議やカンファレンスのように通訳する時間が長くなれば、複数の通訳者が必要となることもあり、時間と投入する通訳者の人数は料金に影響します。
    • 拘束時間。 一般的には、通訳者の拘束時間(半日もしくは一日)によって料金が異なります。ただし、対面式通訳で遠方の会場への移動や出張を伴うような場合には、移動費あるいは出張費といった費用が加算されることもあるので、依頼状況に応じて事前確認をしておく必要があります。
    • 言語ペア。言語の数や組み合わせも、料金に影響します。希少な言語の通訳には、対応可能な通訳者の数が限られるので、料金が高くなることがあります。言語ペアによっては通訳が難しくなり、費用もですが、通訳者の確保や、他の言語を間に挟むことへの対応などに時間を要することが予想されるので余裕を持って依頼相談をすることをお勧めします。発話者の言語を何言語に通訳するかによっても必要な通訳者の人数が変わるので、人数が多くなれば多くなるほど料金は上がっていくと考えてください。

    また、ビデオ通訳のような場合に通訳音声を含めた録音・動画を撮っておき、後日ウェブに掲載したりネット動画として配信したりする場合、二次使用料がかかることもあるので、事前に録音・録画を作成するか、それをどのように利用するかまで確認しておくようにしてください。

    通訳とは非常に込み入った作業であり、特に複雑な内容を扱う場合には専門知識も必要となります。高い評価を得ている通訳会社、一定の質を保ち続けている通訳会社を探しましょう。顧客満足度調査や口コミは、その会社が利用者からどう評価されているかを見る指標となります。

    通訳会社を選ぶ際には、焦らずにじっくりと検討することが大切です。リモート通訳が必要になりそうな場合に備え、前もって通訳会社を検索・選定しておくとよいでしょう。異なる言語間でメッセージを的確に伝えてもらうためには、用途や求める質に適した通訳者や通訳会社を選んでください。

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