金融・ファイナンス関連のローカライズでやりがちな4つのミス

金融商品の取引がグローバル化し、商品やサービス、関連文書のローカライズのニーズは急速に高まり、金融・ファイナンス翻訳の需要も拡大しています。

企業が金融関連のコンテンツを翻訳・ローカライズする際には、さまざまな要件を満たす翻訳会社を選ぶことが重要です。金融系商品や文書は、それぞれの内容や目的を鑑みて適切に翻訳・ローカライズする必要があるためです。

複雑な金融関係のコンテンツをローカライズする際に陥りがちな失敗もあります。ここでは、最も頻繁に起こりえる4つのミスとその回避策を紹介します。

1)専門用語の誤訳

特有の専門用語が多い業界・分野がありますが、金融業界もそのひとつです。そのため翻訳プロセスにおいて、誤訳が起こる可能性は捨てきれません。翻訳ミスの原因には以下のようなものが考えられます。

用語の変化
企業の新製品発売やサービス改善に伴い、新たな業界用語が日々登場します。翻訳者は常に新たなトレンドを追いかけなければなりません。
地域による用語の違い
使用される業界用語も、アメリカ英語とイギリス英語など、地域によって異なります。例えば、買掛金をイギリスでは”creditors”、アメリカでは”accounts payable”と呼びます。機械的な直訳ではなく、地域性を鑑みた訳語の選択が必要です。
細分化された専門分野
一口に金融といっても、銀行と保険会社では専門性が異なります。翻訳する内容と翻訳者のミスマッチがあれば、誤訳が発生する可能性も高くなります。
金融プロセス・慣例の違い
ローカライズの担当者は、単に正確な訳語を知っているだけではなく、対象国・対象地域の法令やプロセスを知った上で適切な専門用語に置き換えなければなりません。

回避策 
専門用語の誤訳を避けるのに欠かせないのが校正・校閲です。ローカライズされた文書を校正・校閲者が厳密にチェックし、正しい用語が使われているかを確認します。また用語集や翻訳メモリを活用することで、文書内の用語統一を行います。こうしたツールを適切に活用し、用語やスタイル、トーンを整えたローカライズができる翻訳会社を利用することをお勧めします。

2)数字・単位の表記ミス

金融関連の翻訳でよくあるもう一つのミスが数字または単位の誤りです。数字に関する翻訳ミスは、わずかな誤りであっても致命的です。例えば、桁区切りの表記が国によって異なることなどには細心の注意が必要です。

日本や英語圏の大多数では小数点はピリオド、桁区切り記号はカンマで表記されます。「2,500」は二千五百、「2.500」では「2」が1の位でピリオド以下が小数点以下を表します。しかし、ベトナムやドイツのように、小数点はカンマ、桁区切り記号がピリオドで表記される場合には「2,500」が日本の「2.5」、「2.500」は二千五百になるといった違いがあるので、その国(言語)の数字表記にも注意が必要です。

こういった理由から、英語からスペイン語への翻訳で$100,000(10万ドル)が100ドル($100)と翻訳されるようなミスが起こってしまうのです。

回避策
数字に関するミスを避けるためには、金融分野を専門とするネイティブの翻訳者が在籍する翻訳会社や言語サービスプロバイダー(LSP)を利用しましょう。普段からソース言語と対象言語の数字表記のルールに慣れ親しんだ翻訳者・校正者であればより確実な翻訳ができます。

また、機械翻訳ポストエディット(MTPE)を利用する場合も、金融分野を専門とする校正者がポストエディットを行い、数字表記に関する機械翻訳のミスを確実に修正できる翻訳会社・LSPを選ぶべきです。

3)コンプライアンス・法令への抵触

翻訳の正確さに問題がなかったとしても、ローカライズした金融商品やそれに関わる文書が現地の法令やコンプライアンスに違反するようなものであってはなりません。特に、税金や雇用、労使働に関わるものなどは、国ごとのルールや法令を順守した内容になっている必要があります。

法的規制やルールは国によって異なり、フィンテックが参入しやすいところもありますが、多くの国や地域は参入のハードルが高いのが現状です。それぞれの国ごとの規制や法令に対応したローカライズを行うのは容易ではありません。

金融関連企業でなくとも、企業が海外の証券取引所への上場を目指す場合などは、現地の言葉で必要書類を提出しなければなりません。一般的には事業許可取得のための法的書類も、その国の言語で用意しなければなりません。そうした手続きは非常に複雑かつ煩雑で、一つでもミスがあれば処理が大幅に遅れる可能性もあります。

回避策
金融関連の翻訳を行う場合、対象国あるいは市場の規制・法令について高度な知識を持つ翻訳会社・LSPを選ぶようにします。翻訳者の選定も慎重に行い、その分野の豊富な経験を持つ翻訳者に担当してもらいましょう。法令や規制を熟知した専門家であれば、さまざまな法的要件に対応したローカライズが行えるはずです。

4)機密保持ガイドラインの不備

ローカライズで陥りやすい4つ目のミスは、プライバシー保護と秘密保持に関するものです。金融関連の企業であれば、取り扱うデータの安全性を確保しなければなりません。セキュリティの不備は、莫大な財務的損失を生むことになります。翻訳・ローカライズを委託する翻訳会社・LSPに明確なセキュリティポリシーがない場合、大きな問題となり危険性があるので事前に確認しておく必要があります。

回避策
金融分野において実績の豊かな翻訳会社・LSPに、プライバシーと機密保持の契約を結んだ上でローカライズを依頼します。秘匿性の高い文書をどのように管理しているのか、セキュリティポリシーにつき確認しておきましょう。データの暗号化、翻訳管理システム、インフラストラクチャ、リモート・アクセスのツールや手段などの安全性が確保されている必要があります。

金融商品やサービスの新規市場への投入において、金融・経済翻訳/ローカライズは大きな一歩です。対象国・市場の金融事情に精通した翻訳者を有し、安心できる品質保証プロセスを持つ翻訳会社・LSPにローカライズを依頼することが失敗の回避につながります。

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