効果の最大化: 日本のゲーム産業におけるローカライズの役割
ゲーム産業は近年、大きな変貌を遂げており、単なる娯楽にとどまらず、さまざまなキャリアを支える一大産業としての側面も注目されしています。そして、このゲーム産業の成長を牽引しているのがゲームのローカライズです。ローカライズにより、特定の地域や文化に合わせたゲームを開発することができ、市場を拡大して、多様なプレイヤーにゲームをより身近なものとすることができます。
ゲーム市場の規模、上位3カ国
1. 中国
中国は世界最大のゲーム市場であり、7億4千万人のプレイヤー人口がいると推定されています。中国には、カジュアルなモバイルゲームを楽しむ層から本格的なeスポーツファンまで、幅広いゲーマーが存在します。中国では無料のゲームが好まれる傾向があり、中国での売上上位のゲームの多くはモバイルゲームです。2020年、中国のゲーム市場規模は推計450億ドル以上で、ゲーム開発者にとって重要な市場となっています。
2. アメリカ
アメリカは世界で2番目に大きなゲーム市場であり、推定2億1千万人のゲーマーがいるとされています。アメリカではコンソール、PC、モバイルなど多様なデバイスでゲームが楽しまれています。eスポーツが盛んで、eスポーツのトップチームや選手の多くがアメリカを拠点としています。2020年、米国ゲーム市場は推計450億ドル以上を記録しました。
3. 日本
日本はゲーム業界の主要な市場であり、推定約5535万人のプレイヤー人口がいます。(『ファミ通白書2022年』調べ)日本のゲームユーザーは情熱的で熱狂的であり、コンソールゲームやモバイルゲームが好まれます。日本には豊かなゲームの歴史があり、有名ななゲームメーカーの多くは日本発祥です。2021年、日本のゲーム市場規模は推計2兆27億円以上を記録しました。
ゲーム界のサクセスストーリー :日本で成功した海外のゲーム
日本はテレビゲームの黎明期からゲーム業界の主要な市場であり、任天堂、ソニー、セガなど、日本企業で世界的なゲーム会社は少なくありません。日本のゲーム市場は世界でも有数の規模を誇り、熱狂的なファンやゲーム開発・革新の豊かな歴史を背景に、進化し続ける活気あるダイナミックな産業です。
ここでは、ゲームのローカライズによって日本のユーザーから絶大な人気を集めたゲームの例を紹介します:
グランド・セフト・オート
『グランド・セフト・オート』を日本向けにローカライズしたロックスター・ゲームス社は、日本のオーディエンスにアピールするため、暴力的なシーンの削除や編集など、日本人の感性に合うようにゲームに大きな変更を加えました。また、日本の人気音楽をフィーチャーしたラジオステーションを作るなど日本語のボイスオーバーを追加しました。また、英語が苦手な人でもプレイしやすいような様々な工夫も加えました。
『グランド・セフト・オート』のローカライズの課題のひとつは、言葉の壁でした。ロックスター・ゲームスでは、日本人の翻訳者チームを採用し、ゲームの日本語版脚本や字幕などを作成しました。また、日本文化を把握するコンサルタントが、ゲーム内の表現やジョークを日本の観客に理解されるものに改めました。さらに、日本のゲーマーの好みに合わせた操作性も追及しました。こうした努力が実り、『グランド・セフト・オート』は日本でヒットし、その没入感のある世界観と文化的な配慮が高く評価されました。
マインクラフト
「マイクラ」の略称で呼ばれ、幅広い世代に人気のゲームであるマインクラフト(Minecraft)は、スウェーデンのビデオゲーム開発会社Mojang Studiosが開発したサンドボックス型ビデオゲームです。、2012年にXbox 360向けに日本で初めて発売され、その後他のプラットフォームでも発売されました。マインクラフトの日本でのローカライズでは、テキスト翻訳だけでなく、グラフィックやゲームの操作を日本市場に合うように調整する作業も行われました。
マインクラフトの日本でのローカライズにおいて特筆すべきは、日本のプレイヤー向けにチュートリアルモードを新たに設けたことです。このモードでは、日本語を話すキャラクターがプレイヤーを案内し、ゲームの仕組みを詳しく説明します。
また、日本の伝統的な建築物や芸術など、独特の文化や嗜好も考慮したローカライズが行われました。その結果、桜や障子、日本地図など、日本をイメージさせる要素がいくつも盛り込まれています。
マインクラフトは日本でも好評で、熱心なプレイヤー層と好調な売上を誇っています。実際、2021年時点で、『マインクラフト』は日本で最も売れたビデオゲームの1つで、Nintendo Switchだけで220万本以上売れています。
コール オブ デューティ
コール オブ デューティー(Call of Duty)は、シューティングゲームの人気シリーズで、発売当初から日本市場向けにローカライズされました。ローカライズでは、ゲームのテキスト、字幕、音声を日本語に翻訳し、ユーモアを含む文化的な要素を日本のマーケットに合わせて調整されています。
『コール オブ デューティ』シリーズにおけるローカライズの顕著な例が、日本語版『コール オブ デューティ ワールド アット ウォー』で、広島と長崎への原爆投下に関する記述が削除されたことです。このゲームの日本版の発売元スクウェア・エニックスが、日本のプレーヤーにとって不適切であると判断してゲームから削除することとしたのです。
日本でのゲームローカライズに必要な要素
ゲームを日本のような競争の激しい市場に向けてローカライズするためには、いくつかのポイントを念頭に置くことが極めて重要です。日本での成功を目指すゲーム開発会社は、市場でのゲームの売れ行きを左右する、以下のような要素に注意すべきでしょう:
- 文化的配慮:
ゲームのローカライズにおいてまず考慮すべきは日本特有の文化や社会規範です。日本のプレイヤーに共感されない可能性のある内容やキャラクター、ストーリー展開は取り除く必要があります。日本のユーザーにとってより魅力的なゲームにするために、ゲームの内容を変更するのです。例えば、『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』日本語版では、米国とロシアの架空の紛争を描くのではなく、米国と南米の架空の国との紛争に焦点を当てたフィクションをベースにしたストーリーに書き換えられています。。
- 言語ローカライズ:
日本のプレイヤーにシームレスで没入感のある体験を提供するためには、言語面でのローカライズが重要です。『マインクラフト』日本語版では、ゲームのインターフェースやすべてのテキスト要素が日本語にされました。これにはメニューやアイテム、ダイアログボックス、ゲーム内のメッセージなど、あらゆるものが含まれます。さらに、ゲームのチュートリアルも日本に合わせてローカライズされ、日本のプレイヤーが遊び方をより理解しやすくなっています。
- 法規制への対応:
ゲームのローカライズを成功させるためには、日本の規制や要件を理解し、それに準拠することも不可欠です。例えば、ソニーのプレイステーションは、日本で発売するすべてのゲームにCEROレーティング(日本のゲームレーティングシステム)を要求しています。
- マーケティングとプロモーションのローカライズ:
日本での成功のためには、文化的に適切な広告やマーケティング戦略を用いたゲームの宣伝も大切です。例えば、任天堂の『とびだせ どうぶつの森』では、自然や季節の移り変わりを愛でる日本人の心をくすぐり、地域のイベントや季節のテーマを使ったプロモーションが行われました。
- モバイルデバイスへの最適化
日本ではモバイルゲームの人気が非常に高いため、ゲームをモバイルデバイスに最適化することも不可欠です例えば、日本のゲーム『モンスターストライク』は、モバイル向けに最適化され、使いやすい操作性を備えているため、非常に高い評価を得ています。2022年の10月には、80億円近い月間収益を生み出しています。
まとめ
グローバル化が進む今日、ゲームのローカライズは、より多くのユーザーにリーチし、ゲームの潜在的な成功を最大化しようとするゲーム開発会社にとって、極めて重要です。単に文字情報を翻訳するだけでなく、ターゲットとなるユーザーの文化的・社会的嗜好にゲームを適合させることがゲームのローカライズであり、時に大幅な改定も必要となります。
クリムゾン・ジャパンのようなゲームのローカライズを専門的に行う会社を利用することで、国内外の市場に合わせたゲーム作りはスムーズに進められるでしょう。経験豊富な翻訳者とローカライズを専門とするスタッフが、専門知識と経験を元にターゲット層の心に響くゲームを作り上げるサポートを行います。日本から世界へ、そして世界から日本へとゲームを届けるお手伝いをします。