翻訳者の仕事の魅力、翻訳者になるために必要な学習・資格
言語に魅力を感じる人にとって、翻訳という仕事はやりがいの大きな職のひとつです。翻訳者は、言語や文化の橋渡しを行い、仕事を通じて人々に貢献できるのです。
翻訳者としての仕事の魅力
グローバルな仕事に関われることや、ある程度の収入が得られるという実益まで、翻訳者としての仕事には多くの魅力があります。人それぞれという部分もありますが、例としていくつか挙げてみます。
文化の架け橋となれる
翻訳者の仕事の面白いところは、他の国際的な職種とは違った意味合いで、グローバルな仕事の一端を担えるということです。翻訳者になるということは、言葉を知り、文化を知り、その地域の独自性を理解することです。ですから、翻訳者であるということで、必然的に多文化の世界に身を置くことができるのです。
新たな気づきが得られる
翻訳とは、ある言語から別の言語に言葉を置き換えるだけではなく、その意図を正確に伝える作業です。そのため、言葉や文化、社会について常に新しい知識を探求し続けることが求められます。また特定の分野に特化した翻訳者は、自分の専門分野の最新動向も把握している必要があるので、常に新しいことに気付く、あるいは学ぶチャンスに恵まれているとも言えます。
人々の役に立てる
翻訳者の仕事は、人と人との間のコミュニケーションを手助けする大切な作業です。患者が治療計画を理解できるようにしたり、Eラーニングを別の言語で受講できるようにしたりすることによって、自分の仕事が他の人々の役に立ったり、スキルアップに結びついたりすることも少なくありません。
安定した収入が得られる
多国籍企業の社内翻訳者、翻訳会社・言語サービスプロバイダーの社員、フリーランス翻訳者など、雇用形態や働き方はさまざまですが、技能や専門知識を活かすことで、高い収入を得ることも可能です。アメリカの求人サービスZipRecruiterが公表しているデータによると、米国での翻訳者の平均時給は29ドル(年収60,118ドル)(2021年5月時点)。ちなみに東京の翻訳者の時給も同じ29ドルとなっていましたが、これはあくまでも平均なので、経験や技術によってさらに高収入を得ている翻訳者もいれば、平均に届かない翻訳者もいます。収入を上げるためには翻訳スキルの向上は必須です。
高まるニーズ
グローバル市場に進出する企業が増えており、翻訳の需要も高まっています。特に、多言語を専門とする翻訳者への需要が顕著です。市場での需要の高まりにともなって雇用数も増えるとの見方もあります。米国雇用統計による予想では、翻訳者と通訳者の雇用の2029年までの伸び率は、他業種よりもはるかに高い20%となっています。
翻訳者となるために必要な学習・資格
では、どうすれば翻訳者となれるのか?単に複数の言語が話せるというだけでは翻訳者にはなれません。翻訳者になるためには、以下のような点を考慮することが必要となります。
言語ペアの選択
翻訳者としての第一歩は、自分がどの言語を正確に翻訳できるかを知ることです。細かいニュアンスを誤解することによって生じるミスなどは、翻訳者としての評価に傷をつけたり、クライアントの評判を落としたりしかねません。自分が最も得意とする言語や、伸びしろのある言語を定めて、その言語への理解を深めていくことが大切です。
武器となる専門分野
優秀な翻訳者は、2つ以上の言語に精通しているだけでなく、何らかの分野について高い専門知識を持っています。例えば金融関係のアプリケーションの翻訳では、経済や金融の用語・概念についての見識が求められるなど、分野に特化した知識・専門性は翻訳者として仕事をする上での武器となります。
専門教育
翻訳の仕事に従事することを目指して、大学の学部や大学院で翻訳を学び、学位を取得するのもひとつの選択です。例えば、オハイオ州ケントのKent State UniversityやイギリスのUniversity of Warwickなど、世界には翻訳に関する優れたプログラムを提供する大学があります。また、翻訳技能を学ぶだけでなく、文章力や会話力を向上させることも大切です。翻訳者育成のプログラムを有する翻訳会社もあれば、翻訳を学べる学校もあるので、それらを活用し、翻訳の基礎を学習しておくとよいでしょう。
翻訳スキルの認証
資格や検定などの翻訳スキルの認証を取得していると、クライアントは安心して仕事を依頼できます。検定には、専門分野に特化したものと翻訳全般についてのものがあります。アメリカの場合、米国翻訳者協会(American Translators Association)などが翻訳者の認定を行っており、日本でも一般社団法人日本翻訳協会の「JTA公認翻訳専門職資格試験」や一般社団法人日本翻訳連盟の「JTFほんやく検定」などがあります。
翻訳は、語学力を生かせる魅力的な仕事です。そして翻訳の仕事は、収入をもたらすだけでなく、世界とつながりつつ、人々の助けになることもあるといった幅広いものです。最近では機械翻訳の性能も良くなってきてはいますが、まだまだ翻訳者の需要は伸びていますし、翻訳という仕事の幅も広がっていきそうです。