「専門性のある」翻訳者になろう!

「翻訳をする際に、翻訳者に求められることは何ですか?」――。
この話題になると、必ずと言っていいほど挙がるのが、「翻訳する言語と翻訳する先の言語双方にネイティブレベルの流暢さがあること」、「双方の言語を使用する国の文化をよく理解していること」ではないでしょうか。しかし、翻訳する文書が専門性の高いものである場合、これだけでは足りません。もう一つ求められるのが「該当する分野の専門性を有していること」です。今回は、これがなぜ必須だと言われるのかに迫ります。

「専門性がある」ってどういうこと?

そもそも「専門性がある」というのは、どういう意味でしょう。これは、翻訳者が、翻訳する文書の内容に関する専門知識を持っている、という意味です。例えば、英語で書かれたアメリカの法律文書を日本語に翻訳する際、アメリカの法制度と日本の法制度の知識を持っていなければ翻訳できません。あるいは、心臓疾患に関する医学論文を翻訳する際には、心臓学・循環器学の専門知識が必要です。分野ならではの用語を理解し、的確に翻訳できる能力は非常に重宝されます。その理由は後から見ていきましょう。

では翻訳者は、こうした専門性をいかにして手に入れることができるのでしょう。そのバックグラウンドから、大きく3パターンに分類することができます。ひとつは、該当する分野の修士号・博士号などを取得し、学問としての専門知識を習得している場合です。もうひとつは、該当する分野での実務経験があり、定年などの理由で実務から退いた後、翻訳に携わっている場合。そして最後は、該当する専門分野で実務を行いながら、その傍らで翻訳を手がける場合です。特に、3つ目にあげた翻訳者は、専門分野に関して強みを持っていると言えるでしょう。まさにその専門分野の現場で働いているため、その分野を取り巻く環境や最新の技術、トレンドなどを最も身近に感じているはずです。

専門知識はなぜ重要なのか

では、なぜ専門分野の知識が必要で、またどのような点で翻訳に生かすことができるのでしょうか。

まず、専門分野の知識があると、専門用語を正しく翻訳することができます。専門性の高い学術論文などは、極めて高度な専門用語を使って書かれています。これを平易な単語に置き換えて訳してしまった場合、そもそも論文の著者の意図を的確に伝えることができなくなってしまうだけでなく、そもそも著者の専門性が低いようにも捉えられてしまう危険があります。

また、専門分野の知識があれば、記号や略語も正しく翻訳することができます。専門分野にはその分野固有の用語体系や略語、記号などがあります。これらは分野が異なれば、使い方も異なります。したがって、該当する分野を専門としていない翻訳者が訳した場合、まったく意味が異なった訳文になってしまう恐れがあります。著者や読者と同じレベルの専門知識を有していない翻訳者が翻訳を行った場合、専門性の高い文書は得てして正確に翻訳されず、高い確率で読者が意味をはき違えてしまうことになりかねません。これは、法律文書や医学論文などに限りません。ビジネスにおける契約書も、商慣習の違いから国によって解釈が異なることが多く、翻訳者には深い理解と知識が求められます。

どうやって専門性を高めるか?

原文の意図を正確に把握できなかった結果、翻訳の修正を繰り返す……。こうしたケースは、決して珍しくありません。翻訳者が専門性を有していないということは、依頼者の時間を奪うばかりか、プロジェクトやビジネスの妨げにすらなりかねません。どの分野においても、その分野を取り巻く環境や技術は日々進化し、新たな発見によって常識とされていたことが覆ることもあります。情報収集を怠れば、文書の意図やニュアンスを正確にくみ取った翻訳をすることは難しくなるでしょう。該当する分野で実務を行っていない翻訳者であればなおさらです。翻訳者には、日々専門性を高める努力、最新情報に常にキャッチアップしていく姿勢が求められるのです。

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