VUIシステムの入力音声をローカライズする

2022年だけで、スマートスピーカーの設置台数は世界で1億5,000万台を超えました。相互接続が進むこの世界で私たちがデバイスやシステムとどのように関わるかを決める鍵はテクノロジーに依存しています。そのような技術的飛躍のひとつが、ユーザーが音声コマンドを使ってアプリケーションやサービスと対話する音声ユーザー・インターフェース(Voice User Interface:VUI)の発明です。VUIシステムが普及するにつれ、シームレスで包括的なユーザー体験を確保するためのローカライズの役割も重要性を増しています。

この記事では、音声ユーザー・インターフェイスのローカライズの意義と、グローバルな視聴者に対応するための方法を探ります。

音声ユーザー・インターフェース(VUI)のローカライズとは?

音声ユーザー・インターフェイスのローカライズでは、特定のターゲット・オーディエンスの言語的、文化的、地域的な好みに合わせたカスタマイズを行います。単なる翻訳にとどまらず、現地の方言、アクセント、慣用句、文化的規範を深く踏まえたローカライズが必要です。

最近の統計では、音声アシスタントの重要性が増していることが示されており、私たちの日常生活にも入って様々なデバイスやアプリが入って来ています。予測によると、2023年までに音声アシスタントの世界の利用者数は80億人に達するとされています。

VUIローカリゼーションのための多言語音声翻訳

多言語音声翻訳が、音声ユーザー・インターフェイス(VUI)のローカライズの基本です。VUIがさまざまな言語で発話されたコマンドを理解し、応答できるようにする上で、音声翻訳は極めて重要で、ユーザーと音声対応デバイスまたはアプリケーションとの間のシームレスな多言語コミュニケーションはそれにより実現します。ユーザーが母国語で話した内容を、音声翻訳コンポーネントが、VUIシステムの理解するターゲット言語に変換します。この仕組みにより、言語の境界を越えたユーザーフレンドリーな体験が促進されます。

ここでは、音声翻訳がVUIシステムのローカライズをどのように促進するかを説明します: 

  • 多言語インタラクション: 音声翻訳により、ユーザーの指定する言語でVUIと対話することができ、より多くのユーザーがデバイスにアクセスできるようになります。
  • シームレスなユーザー体験: 音声翻訳により、ユーザーは母国語で簡単にコミュニケーションをとることができ、より直感的でユーザーフレンドリーなインタラクションを実現します。
  • 文化的適応: VUIシステムのローカライズ作業には、言語の翻訳だけでなく、ターゲット・オーディエンスの文化的嗜好やニュアンスにコンテンツを適合させることも含まれます。音声翻訳により、ユーザーに対する応答が文化的に適切なものになります。
  • 市場リーチの拡大: 多言語の音声翻訳を組み込むことで、VUIシステムを採用した製品やサービスの市場範囲は拡大し、多様な言語的背景を持つユーザーにアピールすることができます。
  • ーザー満足度の向上: 効果的な音声翻訳により、VUIから正確で文脈に即した応答が得られるため、ユーザーの満足度とエンゲージメントが向上します。

VUIローカライズのベストプラクティス

多様な言語と文化の音声コマンドと応答

VUIシステムのローカライズでは、自然で没入感のあるユーザー体験を提供するために、各言語の固有の特性を理解する必要があります。たとえば、言語や個々のユーザーによって、フォーマルな話し方とくだけた話し方など好まれる音声が異なり、その発話に合わせた応答が必要になります。例えば、
英語(フォーマル): “Could you please set a reminder for tomorrow at 3 PM?”(明日の午後3時にリマインダーを設定していただけますか?)
英語(インフォーマル):”Can you remind me tomorrow at 3 PM?”(明日の午後3時にリマインドしてもらえる?)
この例では、VUIはユーザーの好みまたは文化的規範に基づいて言語を適応させ、親しみやすく対話できるようにします。

正確な翻訳のための言語と文化の専門家の起用

誤訳や文化的な誤解を避けるためには、言語や文化の専門家とのコラボレーションが不可欠です。例えば、「OK」のような単純な言葉でも、言語によって相当する表現が異なる場合があります:
英語:”Okay”
スペイン語:”De acuerdo”
フランス語:”D’accord”
正確な翻訳により、VUIが意図された意味とトーンを維持しながら、各言語で効果的にコミュニケーションできるようになります。

文脈認識と自然な音声インタラクション

文脈を認識することで、ユーザーのエンゲージメントを高め、パーソナライズされた応答を提供することができます。例えば、天気に関連した質問には、ユーザーの位置情報を考慮した適切な情報の提供が必要です。
ユーザー:「今日の天気は?」
文脈を認識するVUI: 「今日、[ユーザーの所在地]の最高気温は22℃または71.6 0 Fで、一時曇りでしょう。」
文脈を組み入れることで、VUIはユーザーにより没入感のある有益な体験を生み出します。

地域差と話し言葉への対応

VUIのローカライゼーションは、言語や文化の地域差を考慮する必要があります。例えば、同じスペイン語圏でも「こんにちは」を表す言葉はいくつかあります。
スペイン: “Hola”
メキシコ:”¡Hola!”
アルゼンチン:”¡Hola, che!”
アルゼンチンの例における “che “のような口語表現を取り入れることで、VUIは特定地域のユーザーにとってより身近で親しみやすいものになります。

パーソナライズされた体験のために、性別と声の好みを組み込む

パーソナライズされた体験は、ユーザーが好みの音声スタイルを選択できるようにすることで実現可能です。例えば「男性」、「女性」、または「ジェンダーニュートラル」といった選択肢を提供するものや、「フレンドリー」、「プロフェッショナル」、「面白い」など声質や語り口を選択できるものもあるでしょう。

ユーザー:「フレンドリーな女性の声に変えて」
パーソナライズされたVUI: 「はい、フレンドリーな女性の声に変更しました」

音声オプションを提供することで、VUIは各ユーザーの好みに合わせた、楽しく包括的な体験を生み出します。

  1. ユーザー・エクスペリエンスと顧客満足度の向上: VUIをローカライズすることで、ユーザーは好きな言語でデバイスやアプリケーションと対話することができ、より自然で魅力的な体験をすることができます。スムーズなコミュニケーションができれば、ユーザーはVUIに理解してもらえたと感じ、ロイヤルティや好意的なレビューも増加するでしょう。
  2. グローバルユーザーへのアクセシビリティの向上: VUIのローカライゼーションによって言語の壁が取り除かれ、より国をまたいだ多様なユーザー層がテクノロジーにアクセスできるようになります。この包括性は帰属意識を育み、英語などのメジャーな言語の話者であるかどうかに関係なく、人々がテクノロジーから恩恵を受けられるようにします。
  3. 新しい市場と顧客セグメントへの拡大: VUIシステムを多言語化することで、企業は自信を持って新しい市場に参入し、これまで開拓されていなかった顧客層に対応することができます。地域の言語や文化的規範を取り入れることで、よりパーソナライズされた体験が生まれ、さまざまな地域のユーザーと共鳴し、市場への浸透が高まります。
  4. 現地語話者のブランド認知と信頼の向上: VUIシステムをローカライズすることで、異文化を理解し大切にする姿勢を示し、現地語ユーザー層からの信頼を築けます。自分たちの言語や文化的嗜好に対応するブランドへのユーザーの信頼やエンゲージメントは高くなります。
  5. ユーザーエンゲージメントとデータ収集: ローカライズされたVUIは、ユーザーエンゲージメントの機会を創出します。音声対話に違和感を覚えなければ、そのテクノロジーを使用する時間も自ずと増えるのです。エンゲージメントの向上は、より多くのデータ収集につながり、さらなるサービスの改善や品質向上に活用することができます

まとめ

音声ユーザーインターフェース(VUI)のローカライズは、包括性、エンゲージメント、世界的なアクセシビリティをもたらすものです。そして、言語間のギャップを埋め、各ユーザーにパーソナライズされた体験を提供します。
翻訳に関する総合サービスを提供するクリムゾン・ジャパンでは、高い専門性を背景に、各種コンテンツやアプリケーション、デバイスのローカライズも行っております。

Leave A Reply

Your email address will not be published.

お気軽にお問い合わせください

toiawase@crimsonjapan.co.jp