ゲームの韓国市場向け翻訳・ローカライズ事情
ゲーム業界は急成長しています。 世界中でより多くの人々がゲームをするようになっていますが、特に成長が目覚ましい地域があり、韓国はその1つです。韓国のゲーム市場は世界で4番目に大きいので、ゲームをローカライズして韓国市場に参入しようとしている企業にとっては、大きな魅力です。
韓国のゲーム市場に関する統計調査(Statista)によれば:
- 2021年、韓国人の71%以上がビデオ、携帯などのオンラインゲームを楽しんでいる。
- 2020年、韓国のゲーム市場は約19兆ウォン(150億ドル)に達している。
- 平均的な韓国のゲーマーは、モバイルゲームあたり約75ドルを費やしている。
韓国市場向けゲーム翻訳・ローカライズを成功させるために、カギとなる要素を抑えておきましょう。
ユーザーインターフェース(UI)のローカライズ
ゲームのユーザーインターフェース(UI)を開発する際、文字表記のような見た目に影響することには、あらかじめ注意を払っておく必要があります。
- 韓国語は、左から右に、または上から下に書かれます。 縦書きは古いとされることもありますが、古風なスクリプトのゲームに使われることがあります。
- 韓国語の文字は、日本語と同じくダブルバイト表記なので、英語の倍のスペースが必要となる場合があり、スペースの取り方や配置に大きく影響します。英語のようなシングルバイトの言語から韓国語にする場合には、事前にレイアウトを考えておく必要があります。
- 「ハングル」と呼ばれる韓国語の表音文字は、母音10個、子音14個の合計24個の組み合わせで構成されています*。母音と子音のパーツをブロックに組み合わせて文字を作りますが、基本的には1文字=1音になるので、文章量が多くなります。この点でも余裕をもったレイアウトにしておくことが必要です。また、英語のように単語によって読み方が変化するということも、日本語のようにひとつの文字が音読み、訓読みのような異なる発音を持ったり、同じ文字なのに異なる意味を持ったりすることはないので、比較的理解しやすい言語と言えます。
*基本となる10個の母音字と14個の子音字の合計24文字に加え、二重母音(合成母音または複合母音とも称される)11個、子音同士を合成した合成子音(濃音子音)5個を含めた全40字から成り立つとするものもあります。40文字の詳細は、母音21(基本母音10個+二重母音11個)、子音19(基本子音9個+劇音子音5個+濃音子音5個)で、24文字とする数え方には、二重母音11個と濃音子音5個が含まれていません。
韓国語への翻訳時に注意すべきこと
ゲームコンテンツを韓国語に翻訳する際には、いくつかの注意が必要です。
単語と言い回し(表現)
- 日本語同様に、韓国語にも外来語(他の言語、特に英語から来ているもの)が多く入り込んでいます。スポーツ、ファッション、医学、工学関連の英単語は、韓国人に広く受け入れられ一般的に使用されているので、訳文にも英単語がそのままの形で記載されることがよくあります。
- かつては韓国語でも漢字が使われていましたが、今はほとんど使われなくなっています。とはいえ、人名の表記や新聞の見出しやなど一部では漢字(한자)が使われることもあります。韓国語の漢字には音読みしかなく、基本的には漢字1文字に対してハングル1文字が割り当てられるので、中国語や日本語の漢字よりはわかりやすいでしょう。ただ、韓国の若者は漢字が読めない人が多いので、ゲームを韓国語に翻訳・ローカライズする際、漢字をどのように扱うかには考慮が必要です。
- 韓国語に翻訳する際の言い回しの違いにも注意が必要です。例えば、「5つのオプションから3つを選択します」との英語を韓国語にする場合、英語では選択する数を先に書きますが(Select three out of the five)、韓国語では母数を先に書きます(Out of five, select three)。こうした言い回しや表現も、韓国ユーザーが見て自然なものにしておく必要があります。
- 前述のように、文字がダブルバイトであることと、ハングルが音を表わす表音文字(素性文字)であることから、韓国語の文章は英語より長くなります。必要なすべての情報を記載するため、韓国語の文章と原文では書き方や文章を切る位置、繋ぎ方が異なるかもしれません。
適正な敬語
韓国語にも日本語同様に「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」がありますが、その使い方には若干の違いがあります。韓国語では、身内や親族であっても目上の人には尊敬語を使いますし、目上の人に対して謙譲語(へりくだった言い方で相手への敬意をあらわす敬語表現)を使うことはありません。全て尊敬語を使います。韓国語の敬語には、敬語にする単語(動詞・形容詞/名詞・助詞)に補助語幹を付けて敬語とするものや、例外的に語幹の形が変わるもの、語彙自体が敬語形に変わるもの(食べる→召し上がるのように元の言葉とは違う形に変わるもの)などがあります。また、丁寧な表現として日本語の「です、ます」に該当する「ヘヨ体、ハムニダ体」もあり、どのシーンでどの表現を使うべきかの判断には状況の理解と慣れが必要です。ゲームのスクリプトを字幕で示すか、オーディオコンテンツ(吹替)とするか、いずれにしても正しい敬語レベルが使用されていることを確認することが大切です。敬語の扱いは難しいので韓国語ネイティブスピーカーの翻訳者を採用しているゲーム翻訳・ローカリゼーションサービスを活用することをおすすめします。
ゲームの色彩
ゲームをローカライズする際には、ゲーム内のすべての画像とグラフィックが文化的に適切であることを確認することも重要です。文化によっては特定の色が特定の意味を持つことがあるため、色の選択にも注意を払います。 一般的に、白は善心と純粋さを表し、黒は死や夜、闇を表しますが、文化的背景によって黒、紫、赤といった色が位の高さや特定の階級を表すこともあります。
価格と支払い設定
ゲームを翻訳・ローカライズする際、関連する支払いや課金が現地通貨に正しく換算されているか、ユーザーは現地通貨のウォンで支払えるようになっているかを確認します。数字を記載する際には、コンマの使い方を間違えないように注意するとともに、小数点の使用を避けて分りやすく表示します(例:₩1000.00ではなく₩1000)。
ゲームのユーザー間コミュニケーション機能
ゲームは単なる娯楽ではなく、コミュニケーションのきっかけでもあることを鑑み、制作会社は、ゲームにコミュニケーション機能を入れ込む方法を模索する必要があります。ユーザー間コミュニケーションの要素として、プレーヤーがメッセージやゲーム内のアイテムを友人に送ったりできるようにしたり、複数のプレーヤーでゲームができるオプションを追加するといった方法があります。人気のある韓国のモバイルゲームのほとんどは、ローカルのソーシャルネットワークを介してサインインできるため、競争力を高めるためにはユーザー間コミュニケーション機能をゲームに入れ込むことが必要です。
残虐な描写の排除
ゲーム業界では言論と表現の自由が認められているとはいえ、残虐行為や暴力の描写は避けた方が無難です。さらに、政治的に慎重に扱うべき歴史、特に朝鮮戦争に関連する歴史を描いたゲームは、韓国市場で受け入れられにくいことを頭に入れておきましょう。
ローカライズしたゲームのテスト
韓国市場で発売する前に、ローカライズ作業がきちんと完了していることを確認するためのテストを行います。品品質管理システムが整っている翻訳会社や言語プロバイダ(LSP)は、ローカライズしたゲームのエラーや不備な点を修正するために必要な評価を行います。
ゲーム市場規模が2025年までに2,680億USドル以上に拡大すると見込まれていることを考えると、ゲームのローカライズを進めるゲーム会社は今後も増えていくことでしょう。韓国のゲーム市場の伸び方を見れば、韓国がゲームのローカライズにとって重要な市場であることは間違いありません。
韓国語ネイティブと過去に確かなゲーム・ローカライズの実績をもつ翻訳会社・LSPと提携して、ゲームのローカライズの成功を目指してみてください。