ライフサイエンス翻訳・医療翻訳の概要と有用性

優れた医療と信頼できる医療情報の提供は世界共通の課題です。世界中で医学研究の成果が共有されるだけでなく、誰もが必要な医療情報を母国語で得ることができるようになることも含め、ライフサイエンス翻訳・医療翻訳は人の命を救うための情報や医療サービスを提供する上で欠かせない役割を担っています。

ライフサイエンス産業の概要

ライフサイエンス翻訳・医療翻訳の重要性を理解するために、業界について簡単に抑えておきましょう。ライフサイエンスにおける最も重要な発展は、1900年代後半に栄養、予防接種、医療行為、衛生などの分野で遂げられました。この時期、医療施設数の増加に伴い、訓練を受けた医療従事者の数も増加し、新薬や治療法の開発も進みました。

今日、ライフサイエンス産業は飛躍的に発展し、製薬、バイオテクノロジー、医療技術、臨床研究、民間療法などさまざまな分野において、企業や機関などが大きな成長を遂げています。

ライフサイエンス翻訳・医療翻訳とは?

特に新型コロナウイルスのパンデミックに関しては、国境を越えて迅速かつ緊急に情報や研究成果を共有することが求められ、ライフサイエンス翻訳・医療翻訳の重要性が注目されました。ライフサイエンス翻訳・医療翻訳はその性質上、正確な翻訳が必須です。たった一語でも誤訳があれば、人の命や健康に関わる重大な問題を引き起こす恐れがあるからです。ライフサイエンスの専門知識を有する翻訳者のいる翻訳会社と提携することで、世界中の人が場所や言語に関わらず情報を得られるようになります。

ライフサイエンス翻訳・医療翻訳は、以下のような重要な役割を担っています。

医療サービス情報の提供:治療が必要な人は誰でも、言語に制限されることなく医療サービスを受けられるべきです。患者は自分の症状を正確に説明すると同時に、自分に対しての医療記録、検査結果、アフターケアに関する指示、同意書の内容などを十分に理解する必要があります。

医薬品情報:患者にとって処方箋の情報は、健康の回復にとって非常に重要です。正しい服用量、服用頻度、薬物相互作用などは治療に不可欠な情報です。こうした情報の翻訳にミスがあると、患者が薬剤の用量用法を誤るなど、重大な健康の危機につながる恐れがあります。

医療機器の取扱説明書と表示(ラベリング):医療機器が正しく機能するには、利用者がその正しい操作方法を十分に理解する必要があります。利用者が指示されたとおりに医療機器を操作するためには表示(ラベリング)、取扱説明書、安全性情報、使用説明書などの正確な翻訳が不可欠です。

臨床試験情報:治験への参加を検討している人が関連情報を完全に把握できるよう、あらゆる文書を翻訳する必要があります。これらの文書には、参加者が被験者の条件を満たしているか判断するための患者アンケートや、潜在的な副作用を認識するための有害事象情報なども含まれます。その他にも、治験の参加を検討する際に考慮すべき重要な情報を共有するインフォームド・コンセントなどの書類の翻訳も必要です。

規制当局への提出書類:製薬業界は最も厳しい規制が存在する業界のひとつです。翻訳に疑義が持たれた場合、規制当局は承認の延期や申請を却下することがあります。医薬品が承認されるには、対象市場の法規制の遵守が不可欠です。他国で医薬品の承認を得ようとする場合には、適格な申請書を準備するにあたり、正しい薬事用語で書かれた使用説明書、品質評価文書、患者への処方情報などの文書を正確に翻訳できる翻訳会社を選ぶことが重要です。

ライフサイエンス翻訳・医療翻訳の有用性

ライフサイエンス翻訳・医療翻訳は、患者や企業にとって以下のような点で役立ちます。

命を救う:ライフサイエンス翻訳は、医療機器の操作方法や、患者の救命治療などにおいて、安全を確保し、人命を救うことに役立ちます。この分野で必要とされる高品質な翻訳を実現するには、ライフサイエンス分野・医療分野に精通した翻訳会社・言語サービスプロバイダ(LSP)に作業を依頼するようにしましょう。

正確な医学研究情報を提供する:医学研究プロジェクトの技術的な詳細を正確かつ簡潔に翻訳するには専門知識が必要です。特定の研究分野に精通した翻訳者を起用し、文脈を捉えやすい翻訳文に仕上げることで、正確な情報が伝わるようにします。

医師と患者のコミュニケーションを促進する:医学研究または治療において医師と患者のコミュニケーションは不可欠です。医療提供者と患者やその家族との間の意思疎通が言葉の壁に阻まれることがないようにするためには、ライフサイエンス翻訳が必要です。ライフサイエンス翻訳・医療翻訳により、医療提供者は患者の症状や病歴などの情報をより簡単に収集し、診断や治療計画を円滑に進めることができるようになります。

医療用語を正確に伝える:ライフサイエンスに特化した翻訳を介することで、専門的な医療用語でも正確に伝えることができます。医療用語は、わずかな表現の違いでも大きな影響を与えかねません。医療用語によっては原語の言い回しに依存する表現もあり、ターゲット言語に直訳できないこともあります。そうした際は、ターゲット言語の読者が理解できるように表現を変更する必要が生じます。また、医療の専門用語は略語や頭字語が使われることが多いため、そうした用語を間違えることなくターゲット言語に置き換える必要があり、専門知識を有する翻訳者による翻訳作業が不可欠となるのです。

すべての医療文書を正しく作成する:医療文書の多くは専門性が高いので、その分野の専門知識を有する翻訳者が翻訳作業を担うべきです。基本的な医療文書ならオンラインの翻訳ツールなどでも翻訳できるだろうと考えるかもしれませんが、用語などによっては適切に翻訳されない可能性も捨てきれません。一部の言葉の翻訳ミスであっても、文書の意味が根本的に変わってしまう可能性があるので注意が必要です。

ライフサイエンス企業の市場開拓をサポートする:ヘルスケア業界が発展するためには、革新的かつ、重要な研究の最前線に立ち続けることが必要です。新しい治療法、医療機器、最新の医薬品が日々開発され、世界中の人に恩恵をもたらしています。ライフサイエンス翻訳・医療翻訳を利用することで、企業は顧客ニーズに応え、現地の規制に適応し、成長・進化を続けながら、必要な情報を世界中に発信することができます。

最良のライフサイエンス翻訳・医療翻訳を確保するために

以下の重要な作業項目を参考に、ライフサイエンス翻訳・医療翻訳の質を確保するようにしてください。

ライフサイエンス分野に強い翻訳会社・言語サービスプロバイダ(LSP)と提携する
まず、ライフサイエンスの翻訳に精通したプロの翻訳者が在籍する翻訳会社・LSPを探します。翻訳会社・LSPは、翻訳者(ターゲット言語のネイティブスピーカー)とライフサイエンス翻訳の知識や実績のある翻訳者を組み合わせることで、翻訳の質を向上させます。誤訳や訳抜けがあると、治療や医療装置の使用上、大きな問題となりかねないことを忘れないでください。優秀な翻訳チームと協力することで、このような重大なミスを回避できます。

明確なスタイルガイドを作成する
翻訳された資料の一貫性を保つため、フォーマット、配色、その他のコンテンツなど、プロジェクトのすべての詳細について明確なフレームワークを導入しておきます。これらのスタイルガイドと要件を事前に把握しておくことで、翻訳プロジェクトを最初から正しい方向に進めることができます。

原文が正確であることを確認する
原文に間違いがあると、その間違いは翻訳文にも反映されてしまいます。例えば、ソース言語の薬の説明文書の用法に記載ミスがあった場合、ターゲット言語の情報にもミスが反映されてしまいます。このようなミスを避けるために、翻訳作業を始める前に原文が厳密な編集・確認作業を経ているかを確認しておきましょう。原文自体が作成中、もしくは追加変更が入ると見越される場合には、どの程度の編集や追加作業が生じるか、情報共有しておくことをお勧めします。

書式を標準化する
文章全体に一貫性を持たせるため、書式を標準化することで翻訳プロセスをより円滑に進めることができます。同意書、申請書、手紙などはテンプレートを使用して、文書の形式を整えます。

翻訳メモリシステムを導入する
ライフサイエンス業界は常に変化しているため、最新の情報に更新することが困難なこともあります。その対策として翻訳メモリシステムといった翻訳管理ツールを導入すれば、最新の辞書、専門用語集、医学百科事典、その他の関連情報の管理をスムーズに行うことができるようになります。翻訳者は言い回しや専門用語をより把握しやすくなり、信頼性と一貫性のある翻訳文を作成することができるようになるので、作業を効率化することにもつながります。

文化的感受性をもって翻訳する
文化的感受性はどの分野の翻訳においても重要ですが、医療分野ではより重要です。特に異なる文化において、任意の言葉(単語)が複数の意味を持つこともあると考えれば、一層の注意が必要です。また、薬品の量(オンス、グラム、ミリリットルなど)の単位などについてはターゲット市場および言語に合わせたローカライズが必要です。

必ず品質チェックを行う
誤訳がなく、対象読者の心をつかみ、文化的な配慮がなされていることを確認するためは、品質チェックの実施が不可欠です。これには、最終的な訳文がプロジェクトの要件をすべて満たしているか、ソース言語で書かれたかのように読めるかを確認することも含まれます。翻訳依頼先の品質チェックプロセスや、品質保証について言及しているかを確認しておきましょう。

データ・セキュリティを重点視しているかを確認する
医薬品開発を行っていたり、臨床試験を実施したりしているような場合、もしくは患者の治療に直接関わっている場合も含めて、秘密保持は極めて重要です。そのため、プロジェクト全体を通じてデータの完全な安全性(セキュリティ)を保証できる翻訳会社・LSPと提携することが必要です。依頼先がデータの安全性を確保するための明確なプロセスを示せるかを確認してください。

ライフサイエンス翻訳・医療翻訳のコスト

翻訳には費用がかかりますが、コストをかけて翻訳することで大きなメリットが得られます。ライフサイエンス翻訳・医療翻訳のコストについて検討する際は、以下のような点を考慮しましょう。

ターゲット読者
ライフサイエンス翻訳・医療翻訳の場合、ターゲットとなる読者に必要な情報が確実に届くようにしなければなりません。専門的な読者を対象とした研究プロジェクトの文書を翻訳するような場合には、作業がより大規模になり、最終的にコストに影響を与える可能性があります。また、ターゲットとする読者に該当の情報(文書)をどのような形で届けるかも翻訳の費用に影響します。

文書の種類
ライフサイエンス翻訳・医療翻訳と言っても、一般的な読者を対象とした文書から、医療従事者などを対象としたより高度な技術や専門的な情報を含むものまで多種多様です。高度かつ複雑な文書の場合はコストが高くなります。ライフサイエンス翻訳・医療翻訳を専門とする翻訳会社・LSPであれば、明確な価格体系を提示し、クライアントの要件と予算に合わせてカスタマイズしたソリューションを提供することができます。

納期
納期までの時間が短いほど、価格は高くなります。これは、納期までの時間が短いほど、作業を完了させるために多くの翻訳者やプロジェクトを管理するための人員を集中的に従事させる必要があるためです。

言語数
翻訳が必要な言語の数と言語の組み合わせによって料金は変わります。希少な言語の組み合わせは、熟練した翻訳者の確保が難しいのが現状です。翻訳対象とする言語数が多く、希少言語が含まれるか否かによって費用に影響し、作業に従事する翻訳者の数が多くなり、作業時間が長くなるほど、料金は高くなっていきます。

翻訳コストを抑えるのに有効なのは、翻訳会社と企業間のコラボレーションです。同じ翻訳会社・LSPと長期的に仕事をすれば、その企業の製品や内容に対する知識が集積され、翻訳プロセスのスピードアップにつながります。プロジェクトに着手するために必要な作業が大幅に削減できるので、その分価格を抑えることも可能です。

ライフサイエンス企業がグローバル化し、世界中で情報交換を行うようになるにつれ、国際的市場への展開を実現させるための翻訳サービスとのコラボレーションを求める企業が増えています。企業が新しい市場に進出し、研究や製品を海外に展開するには、信頼できるライフサイエンス翻訳ソリューションを提供する会社との連携が不可欠です。

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