LINE・WeChatー国内・海外に向けたSNS運用戦略

グローバル市場に事業を展開する企業は、メッセンジャーアプリの活用を通してオンラインでのプレゼンスを拡大しようと試みる傾向がますます強まっています。企業はメッセンジャーアプリを顧客やフォロワーとの交流のプラットフォームとして、またマーケティングやブランディングを行うための強力なツールとして活用しています。

この記事では、多くのユーザーを抱える日本の「LINE」と中国の「WeChat」、2大アプリの特徴や違いを踏まえ、これらのアプリがどのようにマーケティングに役立つかを紹介します。

LINEとWeChat

LINEやWeChatを活用する方法の前に、この2つのアプリの特徴を理解しておく必要があります。

LINE

LINE は、日本国内でもっともユーザーの多いメッセンジャーアプリ で、月間9,300万人(2022年8月末時点の公式発表数) が利用しています。ユーザー数は日本が最大ですが、海外でも使われています。もとは韓国NHNの日本法人であるNAVER Japanという会社が開発したアプリですが、現在はZホールディングス傘下のLINE株式会社が運営・開発を担っています。メッセージ送受信はもちろん、音声通話・ビデオ通話、ニュース配信、ウォレット(電子決済)、音楽配信など、SNSプラットフォームとしての多彩な機能を有しています。日本市場向けの広告を出そうとする企業にとって、オンラインでのプレゼンスを高め、潜在的な顧客にアプローチするためには不可欠とも言えるツールです。

ビジネスでLINEを活用するには、販売促進などに利用できる「LINE公式アカウント」とLINE利用者に広告配信できる「LINE広告」の2つの方法があります。LINE公式アカウントで法人アカウントを開設すれば、ユーザーにメッセージを送ったり、ユーザーからの問い合わせに応じたコミュニケーションをとったり、クーポンを配信することができます。LINE広告は、LINEに広告を出稿するための広告配信プラットフォームで、アカウントを作成することにより手軽にオンライン広告を発信することができます。いずれも、年齢や性別、興味・関心などのセグメントに応じたターゲティングを設定し、潜在的なユーザーに効果的にリーチすることができます。また、LINEが日本の社会インフラとしても重要な役割を担っている点も、企業にとっては見逃せない特徴です。

WeChat

WeChat (微信/ウィーチャット)は、中国版LINEとも言われる中華圏最大級の多目的メッセンジャーアプリで、通信機能のほかにもさまざまな機能が搭載されています。中国Tencent(騰訊/テンセント)社が開発し、2011年から中国でサービスが開始されました。メッセンジャーとしての機能の他にさまざまなSNS機能を有しており、オンライン/オフライン決済、納税の申告、ショッピングも可能で、中国の人々の生活に必要なさまざまなサービスと機能がこのアプリだけで完結できるように設計されています。10億人以上のアクティブユーザーアカウント(2022年9月時点の月間アクティブユーザーは11.3億人超) を持つこのアプリは、中国最大のソーシャルメディアプラットフォームであり、世界でもトップ10に入るSNSに成長しています。中国市場に進出する、あるいは中国人マーケットをターゲットとする企業にとってWeChatの巨大なユーザー基盤は無視できないものとなっています。

WeChatには、購読アカウント、サービスアカウント、企業アカウント という3種類のビジネス向け公式アカウントが用意されています。公式アカウントの発行にはテンセント社に登録する必要がありますが、ターゲティング広告やセール情報を配信したり、クーポンを発行したりすることができます。購読アカウントは、市場をターゲットにメッセージやコンテンツの配信を行うのに利用でき、主に個人ユーザーに利用されています。サービスアカウントは、企業が顧客に対してサービスを提供するのに活用できるアカウントで、LINEの公式アカウントのような機能を持っています。企業アカウントは、企業内部でのコミュニケーションやマネジメントに利用するためのコミュニケーションツールです。それぞれのタイプに特徴がありますが、企業が中国市場向けに製品やサービスに関する情報発信や電子商取引(EC)のプロモーションに使うには、サービスアカウントが適しています。 WeChat公式アカウントを取得し、中国人観光客(インバウンド)向けの情報発信に活用している日本企業もあり、WeChatの投稿を旅行の情報収集に利用している中国人ユーザーも多いようです。

LINEやWeChatの活用を検討すべき理由は、ターゲット層へのリーチやプロモーション、顧客獲得に役立つさまざまな機能が提供されているからです。こうした人気アプリを活用することにより、ユーザーとのエンゲージメントを向上させ、効果的なマーケティング戦略を展開することができるのです。

広告・マーケティングツールとしてのアプリの活用

LINEやWeChatなど、ビジネスに適した機能を提供しているアプリを活用するためには、その最適な活用方法を理解しておくことが重要です。新しい機能も増えているので、情報をキャッチアップしておくことも必要でしょう。公式アカウントでできる基本的な機能には以下のようなものがあります。

・情報発信(公式アカウントのフォロワーに向けてキャンペーン案内などの情報を発信する)
・自社サイトへの誘導(公式サイトのURLを入れておけば自社サイトへの誘導が可能になるので認知度の向上や販売促進につなげることができる)
・顧客情報の取得(フォロワーの性別や年齢、居住地などの顧客情報を取得することで、フォロワーに適した情報発信ができるとともに、市場の傾向分析にも役立つ)
・フォロワーとのコミュニケーション(ユーザーとの相互コミュニケーション)
・広告の表示(バナー広告やタイムラインに広告を掲載する)

メッセンジャーアプリで広告を出すメリットは、なんと言ってもリーチできるユーザー数が多く多様な配信手段があることです。

LINEと関連サービスに広告を配信できる「LINE広告」は、ユーザーのフィードやスポンサーステッカーとして表示されるため、幅広いユーザーにリーチすることが可能です。企業は、LINEのサービスのさまざまな広告媒体、ターゲティングツールに発信することにより、アクションにつながりそうな潜在的なユーザーに広告を届け、商品やサービスの認知向上や売り上げアップにつなげることができます。広告投稿後に配信効果を見ながら改善していける点も企業にとってはメリットとなるでしょう。

WeChatには、「WeChatモーメンツ(朋友圈)」と呼ばれる機能があります。これは、Facebookのタイムラインに似た機能で、自分が投稿した記事を友人と共有する機能ですが、WeChat公式アカウントを取得している企業は、ここに「モーメンツ広告」を表示することができます。モーメンツ広告は、ターゲットを絞って関心を持ってもらえそうなユーザー個人のモーメンツに直接配信することができるので、ユーザー間の情報共有に入り込み、口コミ的にユーザーのシェアによって情報の共有や拡散ができるようになります。

こうしたアプリは、潜在的なユーザーにリーチし、購買意欲を促進するためのさまざまな機能を提供しているのです。

LINEやWeChatのマーケティング効果

LINEやWeChatのマーケティングツールをビジネスに活用するメリットには以下のようなものがあります。

より多くのユーザーにリーチする

LINEやWeChat以外にも、WhatsApp、Facebook、LinkedInなどさまざまなSNSアプリが普及しており、国や地域によってユーザー数やアクセス状況は異なりますが、SNSがビジネスを展開する上で有効な手段であることは共通です。 日本や中国市場では、LINEやWeChatを活用することが、これらの市場をターゲットとする企業にとって最適な選択肢となっています。

ブランド認知度の向上

LINEとWeChatはどちらも非常に多くのユーザーを抱えており、強力なマーケティングツールとなっているので、これらを活用することにより、企業はブランドの認知度を高め、 自社サイトや販売サイト、ブログにトラフィックを誘導し、売上の増加や新規ユーザーの獲得につなげることが可能です。

エンゲージメントとコンバージョンの向上

本来、マーケティングは、新規ユーザー獲得とユーザーとのエンゲージメント(つながり)を強化することを重要な目的としています。アプリを活用することで、企業はユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供し、ユーザーがどの程度頻繁にサイトを訪問し、コンバージョン(商品購入、資料請求、相談など具体的なアクション)につながったかなどを明確に把握し、成果を向上させることができるのです。エンゲージメントツールとしては、プッシュ通知やオファー、クーポン、製品情報などの発信も含まれます。

SNSを連携させて効率化を図る

LINEやWeChatのようなアプリには、ひとつのSNSで投稿したものが別の媒体にも投稿されるといった連携機能を備えているものがあります。さらに、SNS同士だけでなくウェブサイトと連携させることもできるので、企業は情報提供やユーザーへのアプローチに関連するすべての機能を1つのプラットフォームに集約し、効率化を図ることができます。

LINEやWeChatを利用する際の課題

今やLINEやWeChatなどのSNSアプリは、企業とユーサーをつなぐ上で欠かせないものとなっていますが、これらのツールを的確に活用するには注意しなければならないこともあります。また、日々新しいプロモーション機能が追加されており、それをキャッチアップしていくことも必要です。アプリをマーケティングツールとして利用する際の課題を挙げておきます。

法人登録

公式アカウントの登録には、詳細な会社情報を入力するなど、いくつかの手順を踏む必要があります。WeChat公式アカウントに日本から申請することは可能ですが、記入項目は中国語で記載されているので、注意が必要です。さらに、WeChat公式アカウントの取得には費用がかかるので、その点も確認しておきます。LINE公式アカウントの申請は日本語なので言語の心配はありませんが、用途に合ったプランの選択は必要です。いずれの場合にも公式アカウントを作成する際には、サービス内容、必要経費や申請から公式アカウントの認証完了までに要する時間などの諸手続、および規約をしっかりと確認しておく必要があります。

アプリの適正

国によって主流のアプリが異なり、アプリによって重きを置いている機能も異なるので、運用目的とメリット、コストなどを検討した上で、自社に適したアプリを活用するようにします。また、発信する広告やコンテンツをターゲット市場に適したものに調整する必要があるかもしれません。新しいプラットフォームへの対応には時間とコストがかかるため、企業はマーケティング活動を開始する前に、さまざまな事態を想定しておく必要があります。

アプリ活用におけるセキュリティの注意

ユーザーは、LINEやWeChatを利用する際、個人情報やプライバシーの安全性について懸念を抱くことがあります。企業は自社が収集したデータの取り扱い、プライバシー・ポリシーを明確に示し、個人情報を確実に保護する必要があります。また、手軽に情報が発信できるだけに、誤情報を配信してしまうとユーザーとの信頼関係に支障をきたし、企業としての信頼度が下がる恐れがあります。情報の正確性だけでなく、ユーザーや市場の多様性にも配慮することが求められます。

まとめ

LINEやWeChatの利用者の爆発的な増加に伴い、SNSアプリは商品やサービスの認知度アップやユーザーとのコミュニケーションに欠かせないツールとなっており、これらのアプリを使用してマーケティング活動を展開・改善する方法を理解することが重要となっています。世界ではさまざまなアプリを使った成功事例もあるので、ぜひ公式アカウントを作成し、多様な機能を活用してみてください。


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