ローカライズは内製すべき?外注すべき?
いざ海外展開をしようと決めたら、自社製品やサービス、ウェブサイトなどマーケティングに利用する資材や広報用ツールを、展開先の言語に合わせて翻訳する「ローカライズ」が必要になります。このローカライズを社内で行うべきか、翻訳会社に依頼すべきか、は悩ましいところです。判断を迫られた時、社内にローカライズのナレッジや品質管理をするための人・ツールが整っていなければ、外注したほうがよいのではないかと考える方も多いでしょう。実際、どちらを選択するかは組織の環境や目指すところによって変わってきます。具体的にどのような観点で検討すべきなのか見ていきましょう。
品質管理
社内でローカライズに取り組もうとすると、当然ながら、限られた人員でローカライズに対応することになります。内製の場合のメリットは、ローカライズを行うのが社内の人員であるため、自社製品や業界用語、社内用語などについて深い知識を持っており、翻訳を行う際に適切な用語の選択ができる点です。ただし翻訳する際には、対象となる言語の文法や言い回し、あるいは媒体によって表現を変える必要もあります。例えば、ウェブサイトなのかアプリなのか、オンラインヘルプなのか技術マニュアルなのかといった違いに対応していく必要があるということです。
デメリットとしては、よほどローカライズに慣れている担当者でない限り、言語ごとに対応することが難しい点です。まして、多言語となったら……。対応できるにしても多大な時間がかかる可能性もあります。翻訳会社であれば、ローカライズのナレッジを有する翻訳者が対応するため、適切な翻訳を短納期でできる可能性が高いと言えるでしょう。
プロジェクトマネジメント
内製の場合、ローカライズに関わる翻訳者は、その企業・組織の方針や戦略をよく理解しています。企業・組織の方針をローカライズ・プロジェクトに反映しながら、工程をコントロールする権限も与えられています。ただし、権限があったとしてもプロジェクト管理に長けているかどうかは別の話です。また、展開先が複数の地域にまたがる場合、数々の言語に対応することが難しい場合もあります。
一方、翻訳会社に外注するのであれば、多くのローカライズ案件を手がけているプロジェクトマネージャーが専用の工程管理ツールや翻訳支援(CAT)ツールを使って管理するため、確実な進行ができ、言語が複数になっても各言語に対応する翻訳者を起用することができます。
コスト
内製の場合には、社内のリソースで対応するため、外部に支払うコストは発生しません。たとえスケジュール通りに進まず作業期間が延長したとしても、翻訳テキストに変更が生じたとしても、内製であれば、調整すれば済むことです。これは大きなメリットと言えるでしょう。とはいえ、ローカライズの業務量は一定ではなく、常に変動します。大量の作業が必要な時もあれば、少ないタイミングもあるので、作業に投入する人員の調整は必要でしょう。人件費を適切な額に抑えるべきだからです。逆に、業務量が急増して社内の翻訳者では対応できない場合や、内部処理できない言語へのローカライズが必要となった場合には、外注もやむを得ません。
また、社内でローカライズする場合、翻訳のナレッジは社内で蓄積していくことができる一方で、ローカライズのためのツールを導入する必要があります。需要に応じて外注すれば、人の調整やツールへの投資は必要ありません。
どちらがよいかを判断するには……
社内でローカライズに対応する内製には、適切な社内用語や業界用語をもって翻訳ができる、社内の方針に応じてプロジェクトを進行できる、外部委託費を支払う必要がない、ナレッジを社内に蓄積できる、といったメリットがあります。一方で、多言語および多種多様な書式や用途に対応するために時間がかかる、閑散期でも人件費が固定費として発生し続ける、内製でまかなえない場合が生じる可能性もある、翻訳のためのツールへの投資が必要、というデメリットが考えられます。
例えば、ローカライズのプロジェクトマネジメントに長けている人材が社内にいる、適量のローカライズ作業が継続的に発生する、といった状況であれば、内製で対応することは、外部とのコミュニケーションの手間も省け、効率がよいと言えるでしょう。しかし、内製だけで対応できるかどうかは、事業計画や業務量などの分析に基づく冷静な判断が必要です。
一方の外注をする場合でも、信頼できる翻訳会社を慎重に選択し、自社製品またはサービスの内容をきちんと翻訳してもらうためのコミュニケーションをとることは不可欠です。
どちらの手段を採用するかは、社内の状況やローカライズが必要な量、レベルなどを踏まえ、両者のメリットデメリットをよく比較・検討することが重要です。