機械翻訳の登場で飛躍的に向上した翻訳効率
機械翻訳の登場で翻訳効率が60%アップ
機械翻訳により翻訳作業の効率が60%も向上し、記録的な速さで顧客の要望に応えることができるようになりました。多くの企業が国境を越えて事業を拡げ、より迅速かつ正確な翻訳が必要とされる現代社会において、非常に大きな進展です。
飛躍的な生産性の向上は、洗練されたニューラル機械翻訳(NMT)および人口知能(AI)システムの発展の結果であり、翻訳会社はより短い時間で、より良質なサービスを提供できるようになったのです。
機械翻訳がどのように翻訳の生産性を引き上げたのかを見てみましょう。
より短納期で納品が可能に
機械翻訳の翻訳処理スピードは画期的です。瞬時に大量の単語を翻訳し、かつてない速さで言語処理を行い、その結果、顧客に提供するサービスにかかる時間を短縮することができるようになりました。
人間の翻訳者の生産性はと言えば、いくら翻訳者が急いで仕事をしても、1日に作業できる量は2,000ワード程度でしょう。機械翻訳(MT)を作業に導入すれば、翻訳とポストエディットにかかる時間が大幅に短くなるので、翻訳会社はより多くのプロジェクトを引き受けることができるようになるだけでなく、より複雑なローカライズ作業に集中することができるようになります。
顧客から求められる納期に合わせるためには、翻訳プロセスにMTを導入することが不可欠になってきています。顧客が厳しい納期でのサービスの提供を求めている場合には、MTが重要な役割を果たすのです。
より正確な翻訳文を提供
機械翻訳(MT)による翻訳の驚くべき特徴のひとつは、特にニューラル機械翻訳の進歩によって、翻訳された量が増えるほど、出力(訳文)がどんどん改善されていくことです。人間の脳のニューロン(神経細胞)の働きを模倣する機械翻訳は、集積したデータの情報を結び付け、その情報の全体を捉えて処理します。これによって、機械は訳文の単語の並び(シークエンス)の尤度(尤もらしさ)を予測できるようになり、より正確な訳文につながっているのです。
機械翻訳の精度が高まるにつれ、ポストエディットに要する時間も短縮し、翻訳者はより早く作業を完了できるようになります。
大きなプロジェクトのマネージメントを効率的に
大規模な訴訟案件など、コンテンツ量が特に多い場合、MTを使えば、迅速かつ簡単に訳文を作成できます。例えば、国をまたいだ訴訟を想像してみてください。たった数週間の内に膨大な量の文章をまとめ、重要な法律用語や言葉遣い(フレーズ)をスキャンしておかなければなりません。こうした作業は、翻訳者が単独で処理することは不可能です。MTは、外国語の文書を高速で精査し、関連する用語の検索を助け、最終的にはそれらの用語を記憶することで、タスク(作業分担)をより一貫したプロセスにしていきます。
さらに、AIの自動翻訳機能により、反復的なタスクをより簡単に処理することができます。これらのタスクは、責任を割り当てて経過管理をすると同時に、プロジェクト全体を管理することから成り立っています。こうした管理業務を部分的に自動化することによって、特に大規模な翻訳プロジェクトを行う場合には、時間と費用の両方を抑えることができるのです。
コンテンツを同時に複数の言語に翻訳する
企業が世界中のオフィス(支社など)に情報を伝達しようとする場合、複数の言語にコンテンツを翻訳する必要があります。また、企業が商品やサービスをグローバルに展開しようと計画した場合、多数の言語への大規模な翻訳作業が必要になることもあります。
翻訳会社や言語サービスプロバイダー(LSP)は、MTを取り入れることで、企業が必要とする言語ペアの作業を進めることができます。将来、あらゆる言語に対応できるようにしておきたい場合には、あまり一般的ではない言語も含めて幅広い言語に対応可能な翻訳会社・LSPを選んで作業を依頼することをおすすめします。
複雑なローカライズ処理の時間を確保
翻訳会社・LSPは、MTを活用して節約した時間を顧客のプロジェクトの複雑な側面にまわすことができ、他の翻訳作業に人材を使うことができます。
例えば、顧客が大規模な多言語ウェブサイトのローカライズプロジェクトを計画している場合、翻訳会社は膨大な作業時間が必要になります。そのような場合でもMTが翻訳作業の大部分を管理することができるので、言語担当者は、細かい表現がそれぞれの地域の文化に適したものになっているかなど、ローカリゼーションの具体的な側面に着手することができます。
システムの連携による翻訳の合理化
MTの導入により生産性が向上するもう一つの理由は、MTと翻訳管理システム(TMS)の連携の強化を図ることで、翻訳ワークフローが合理化され、プロジェクトを進める過程で生じるさまざまな作業が自動化されることによります。顧客の管理下にあるTMSから翻訳会社の機械翻訳システムに直接接続できるようにすることで、納期を大幅に短縮することができます。
さらに、翻訳会社・LSPはMTの導入で余裕が持てた時間を利用して、ポストエディット済みのテキストをより詳細に確認し、人間の翻訳者レベルにまで訳文の品質を引き上げることが可能です。
全体として、システムを連携することで処理にかかる時間を短縮し、翻訳会社・LSPは最終納品物に関連する他のタスクに集中する時間を確保できるのです。
スケーラビリティ(拡張性)の向上
最適なプランとプロジェクト管理プロセスがあっても、ときには作業量と翻訳プロジェクトの対象範囲が予想よりも大きくなってしまうことがあります。MTを活用すれば、翻訳会社・LSPは新しい要件に合わせてプロジェクトを迅速に拡張することができます。機械翻訳がなければ、プロジェクト範囲の変更への対処に時間がかかり、大幅な遅延を引き起こす可能性があります。
更新版を素早く翻訳
MTは、マニュアル、ユーザーガイドなどのさまざまな資料が、適宜更新または改訂される際の翻訳作業に有効です。コンテンツを他の言語に翻訳する場合でも、MTを使えば、後々の利用に備えて相応の情報を集め、保存しておくことができます。
翻訳者はポストエディットに専念できる
MTを導入することの最も優れた点のひとつは、人間の翻訳者が介入すべき作業を必要な箇所に絞り込めることです。MTが翻訳作業を完了させていれば、翻訳者や言語担当者は機械翻訳後のポストエディット(MTPE)に専念することができます。機械翻訳の素早い処理スピードと翻訳者による効果的な作業を組み合わることができるので、生産性を向上させるためには欠かせません。
MTPEでは、翻訳者が機械翻訳の作成した訳文を確認し、正確で、流れが良く、明確な文章になるように編集を行います。この過程で、内容が対象者(ターゲット・オーディエンス)から共感が得られるものになるっているかも確認します。さらに、コンテンツの内容が理解しやすく、文化的に適切であるか、ローカライズされた情報とその業界用語(専門用語)などが適切なものかも確認します。
MTPEには2つのタイプがあります。
・ライトポストエディット:機械翻訳された訳文が文法的に正しいかなど、重大な誤りがないことを確認することに重点を置いています。
・ヘビーポストエディット:翻訳者が機械翻訳の訳文を慎重にチェック・修正し、最終的な訳文が正確であることを確認します。
MTPEを追加することで余計に時間がかかると思われるかもしれませんが、最終確認の前に訳文のミスを発見することができるので、実は時間を節約することにつながります。
特定の分野における生産性の向上
生産性の向上にMTが貢献している分野には以下のようなものがあります。
- 動画翻訳:字幕の作成は動画制作の重要な要素です。自動音声認識(ASR)と機械翻訳を組み合わせることで、正確な字幕を作成することができます。まず、音声を文字に書き起こしますが、ASRを利用すれば、自動的に処理することが可能です。次に、機械翻訳で処理します。元のテキストをコンピューターに入力し、ターゲット言語で字幕を生成します。MTは、字幕作成など映像コンテンツの翻訳をより効率的にします。
- 内部のコミュニケーション:国際的にさまざまな地域で事業展開している企業では、従業員との効果的なコミュニケーションがとりにくいこともあります。すべての従業員にメッセージの意図が完璧に伝わるように各地域の母国語で発信するのが理想的ではありますが、世界に点在する支社の数によっては、ほぼ不可能ということもあるでしょう。ここでMTを利用すれば、言語の壁を取り除き、従業員は受け取ったメッセージを完全に理解できるようになります。
- 公式発表:企業がグローバル市場に向けて製品のアップデートを発表する場合など、その情報を迅速に発信する必要に迫られることがよくあります。例えば、ソフトウェア会社が、すべての顧客に同時に通達したいアップデートがあるとします。該当するソフトウェアが複数の市場で普及している場合には、機械翻訳の助けなしに情報を即時に伝えることは難しいでしょう。
- 頻繁に更新されるウェブコンテンツ:企業がサイトを多言語化している場合、すべての言語のサイトで製品の在庫状況、ブログ投稿、製品レビューなどのコンテンツを最新の状態に保つことが難しい場合もあります。MTをアップデート作業に組み込むことで、新しい情報を自動的に翻訳、公開することもできます。
MTが翻訳業界の生産性を大幅に引き上げたことによって、翻訳会社・LSPは顧客により多くの選択肢を提供できるようになりました。かつて翻訳作業にかなりの時間を費やす必要があったのに比べ、今では、人材を翻訳あるいはローカライズプロジェクトの他の作業に投入することができるのです。こうしたMTのメリットを享受するには、プロジェクトの要件を満たすために協力してくれるAI翻訳サービスを提供している翻訳会社・LSPと連携するようにしましょう。