【コラム】最も多くの言葉に翻訳された10冊の本
アメリカで刊行される書籍全体に占める翻訳書の割合がわずか3パーセント であることを考えれば、たとえひとつの言語であっても書籍が翻訳されて出版されるのはすごいことです。そんな中、世界には驚くほどたくさんの言語に翻訳された書物が存在し、時代や国を超えて人々に読まれてきました。このコラムでは、そんな世界的なベストセラー、ロングセラーをご紹介します。
『聖書』
最も多くの言語に翻訳された書物は聖書で、翻訳された言語は3384 にのぼるといわれます。新約聖書と旧約聖書はもともと、ヘブライ語、アラム語、ギリシア語で書かれており、原典 の語数はおよそ61万語です
『ピノッキオの冒険』カルロ・コッローディ著
イタリアの作家カルロ・コッローディの児童文学『ピノッキオの冒険』 はおよそ300の言語に翻訳されています。ジェッペットじいさんが作り上げた木の人形ピノッキオを主人公とした物語は、1883年の初版刊行以来世界の人々を魅了し、これまでに幾度も映画化されてきました。2021年にはギレルモ・デル・トロ監督による 映画の公開も予定されています。
『星の王子さま』 アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著
『星の王子さま』 も約300の言葉に翻訳され、世界でもっとも愛される児童書のひとつです。砂漠に不時着した飛行士が、別の惑星から来たちいさな王子様と出会い、共に過ごし語り合う中で人生にとって大切なものを思い出します。2014年までに、累計1億4000万部以上を売り上げ、毎年新たに200万部が売れ続けるといわれます。
『不思議の国のアリス』ルイス・キャロル著
1865年の刊行以来あらゆる世代の読者を虜にしてきた『不思議の国のアリス』 。174の言語に翻訳され、映画や舞台など、他のメディアにも幾度となく翻案されています。読者はアリスにいざなわれ、白ウサギ、チェシャ猫、三月ウサギ、帽子屋、ハートの女王など個性豊かなキャラクターと出会い、不思議の国を旅します。
『アンデルセン童話』ハンス・クリスチャン・アンデルセン著
デンマーク語から160の言語に翻訳され、世界中を魅了した童話集『アンデルセン童話』 。「人魚姫」や「みにくいアヒルの子」など誰もが知っている物語が多数収録されており、初版刊行の1837年以来、多くの舞台や映画、バレエ作品などにもされてきました。
『海底2万哩』ジュール・ヴェルヌ著(『海底2万マイル』、『海底2万リーグ』などの翻訳タイトルあり)
『海底2万哩』 は1870年フランスで出版され、その後148の言語へと翻訳されています。語り手たちが、謎に満ちたネモ船長の操縦する潜水艦ノーチラス号で、海底に沈んだアトランティスや、紅海、南極などを訪れるSFの古典は、今なお世界で愛読されています。
『ドン・キホーテ』ミゲル・デ・セルヴァンデス著
スペイン語で書かれ1605年に出版された前編と、1615年に出版された後編に分かれる『ドン・キホーテ』 は145の言語に翻訳されています。騎士道物語の読み過ぎで何が現実かわからなくなったアロンソ・キハーノという郷士が、自らを遍歴の騎士「ラ・マンチャのドン・キホーテ(ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)」と名乗って冒険の旅に出ます。
『タンタンの冒険』エルジェ著
『タンタンの冒険』 はベルギーの漫画家エルジェが生み出したフランス語の漫画(バンド・デシネ)シリーズで、115の言語に翻訳されています。少年ルポライターと相棒のフォックステリア犬スノーウィが各国で様々な事件に遭遇します。
『The Adventeures of Asterix(アステリックス)』ルネ・ゴシニ、アルベール・ユデルゾ、ジャン=イヴ・フェリ著
『TheAdventeures of Asterix(アステリックス)』 もベルギーのフランス語圏で刊行された漫画(バンド・デシネ)シリーズで、日本ではあまり知られていませんが115の言語に翻訳され、世界的に広く読まれています。カエサルの時代に、ローマ帝国と戦うガリア地方の戦士たちの姿をユーモアたっぷりに描いています。
『長くつ下のピッピ』アストリッド・リンドグレーン著
スウェーデンの児童文学作家リンドグレーンによって1945年から48年にかけて書かれた3部作(『長くつ下のピッピ』、『ピッピ 船に乗る』、『ピッピ 南の島へ』 )および、短編集と数冊の絵本からなるシリーズは、これまでに76の言語に翻訳されています。赤毛でそばかすだらけの「世界一つよい女の子」を主人公とした魅力的なおはなしです。
これらの他にも、各国語に翻訳された書籍は枚挙に暇がありません。また、翻訳されて初めて原著がベストセラーになった本も少なくありません。書籍の翻訳出版 は、海外での成功と同時に、国内での成功にも結び付くのです。