ソフトウェアのローカライズ
世界各国に合わせてソフトウェアをローカライズすることで、国内だけでは実現できない膨大な数のユーザー獲得も可能になります。ソフトウェアの市場規模は、2021年には5,072億ドルになるとも予想されており、現在はローカライズを行うには絶好のタイミングだと言えるでしょう。
ソフトウェアのローカライズとは
ソフトウェアのローカライズとは、対象市場の文化的、言語的、および技術的なニーズに合わせて単なるソフトウェアを調整するプロセスで、単なる翻訳ではありません。言語情報を移しかえるだけでなく、ソフトウェアの製品全体を対象地域のユーザーに合わせた仕様にします。
ローカライズでは言語や地域ごとの要件に対応し以下のような作業を行います。
- 支払方法、通貨、税金など、現地の会計や財務基準に適合した情報への置換。
- 正確な翻訳の作成。ソフトウェアのローカライズでは、翻訳ミスが致命的になるため100%ミスのない翻訳を行います。
- 言語ごとに見た目に配慮したレイアウト設定を行います。
- 対象言語・地域の文化に配慮したデザインにする。
- 暦、日付、時刻、住所の書式、単位などの要素も現地の形式にする。
- イギリス英語とアメリカ英語、スペインのスペイン語と南米のスペイン語など、地域にあわせたスペルや語彙を選択します。
ソフトウェアのローカライズプロセス
ソフトウェアのローカライズは複数の工程で作業を行いまが、専門的な工程のため実績のある翻訳会社 に提携することが推奨されます。ローカライズは、まず大幅な修正なしに世界中で使うことのできるインターナショナル版を作ることから始めます。
プロセスには以下のような工程が含まれます。
- ソフトウェアとサポート資料の分析による、ローカライズに必要なツールとリソースの選定。プロジェクトの技術的、言語的、文化的ニーズの割り出し。
- 外部リソースファイルの開発。ソフトウェアのコードにユーザーに表示するテキストを埋め込むのではなく、外部参照するように、各言語ファイルを別々に保持するようアプリケーションを設計します。これにより、コードの残りの部分に影響を与えることなく、各言語ファイルの簡単なインポート、エクスポートが可能になります。
- 様々な言語のバージョンが収まる表示スペースの確保。同じ内容を記述していても、言語ごとに、文字数や行間など必要なスペースは異なります。例えば、ヘブライ語は英語よりも40%から50%少ないスペースで記述でき、フィンランド語には最大60%広いスペースが必要とも言われます。また、アラビア語やヘブライ語では右から左に書かれるためそれに配慮したスペース取りが必要です。
- 対象地域ごとの情報ライブラリの作成。ライブラリには対訳用語集のほか、通貨、単位、日付や時刻の表記法など、地域ごとの情報が含まれます。これらをハードコーディングするのではなくライブラリに保存することで、翻訳者はどの形式がどの言語に関連するかを判断できます。
- 製品名の表記、専門用語、語調などに関するルールや、一貫性が必要な情報をについてのスタイルガイドの作成。
- ソフトウェアのコンテンツの翻訳と、翻訳ファイルのアプリケーションへのインポート。この翻訳プロセスでは、ソース言語とターゲット言語の両方のネイティブ翻訳者を選任できる翻訳会社に業務を依頼することが重要です。
- シンボル、アイコン、テキストなどを含むスクリプト、グラフィック等のメディアのローカライズ。特定の国で理解されやすいシンボルの意味が別の国では全く伝わらないことも少なからずあるため、ターゲット市場で受け入れられるシンボルやアイコンを使用することが重要です。
- テスト、再テスト、品質保証試験の実施。ソフトウェアのローカライズは非常に細かい作業の積み重ねであるため、回を重ねてテストを行うことが海外版発売成功の鍵となります。品質テストでは、昨日やコーディングのエラーをチェックし、文法ミスや表記ゆれ・訳語の不統一がなく、文化的配慮がなされた翻訳が行われていることを確認し、ローカライズで起こりうる問題を徹底的に排除します。
ソフトウェアが適切にローカライズされると、見た目や使用感はオリジナル版と同様になります。つまり、ローカライズの成否は、すべてのターゲット言語で変わらない操作性が得られるかどうかということなのです。
ソフトウェアのローカライズを、まだ真剣に検討されていないという企業もおられるでしょう。しかし、全世界でのソフトウェア市場は、2023年までに6,340億ドルに拡大すると予測されています。ソフトウェア業界が成長を続ける中、ソフトウェアをローカライズすることで、収益を拡大し新しい顧客を開拓し、競争力を獲得することが期待されるのです。