【コラム】世界中でベストセラー、最も翻訳された10人の作家
多くの言語に翻訳 された作品は、言葉の壁を越えて世界に愛され、大きな影響を与えてきました。本人たちが想像もしなかった遠い異国で熱狂的に愛読される書き手も少なくありません。国際連盟が1932年に開設した翻訳記録のデータベースを国際連合が引継ぎ、現在、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ:UNESCO)がIndex Translationumとして公開しています。ここでは、データベース中から世界で最も翻訳された作家10人をご紹介します。
1. アガサ・クリスティー
アガサ・クリスティーは『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行殺人事件』などを著したミステリーの女王。ユネスコのデータベースによると英語の原作からの翻訳は合計7236にも及び、存命中も亡くなってからも世界中の人々に愛読されています。そして、世界中での作品の売り上げは20億部以上いわれます。
2. ジュール・ヴェルヌ
『海底2万リーグ(海底底二万哩)』や『地底旅行』、『八十日間世界一周』などの作者ジュール・ヴェルヌ[は、SFの父として知られ、フランス語原典からの翻訳は4751。科学的な文書と文学の双方に多大な影響を与えたといわれます。
3.ウイリアム・シェイクスピア
戯曲、詩、ソネットなどの作品群で、世界の文学と演劇に大きな足跡を残したウイリアム・シェイクスピア の作品の翻訳数は、ユネスコのデータベースで4296。『ロミオとジュリエット』や『ハムレット』、『テンペスト』など何らかの形で作品に触れたことがある人が多いでしょう。
4. エニッド・ブライトン(イーニッド・ブライトン)
イギリスの児童文学作家エニッド・ブライトン の書籍の累計販売部数は6億以上。日本でも多くの作品が翻訳されていますので、子どもの頃に読んだという人も少なくないでしょう。代表作は『ノディ』シリーズ、『五人と一匹』シリーズなどで翻訳件数は3924に及びます。
5. バーバラ・カートランド
生涯に発表した小説は723作。イギリスの小説家バーバラ・カートランド は驚異的な執筆スピードで知られ、1983年には23冊の作品を出してギネスブックにも認定されました。ビクトリア朝を背景にしたロマンスなどで知られ、データベースには3652件の翻訳が登録されています。
6. ダニエル・スティール
イギリスのカートランドに次いで多い3628件の翻訳があるのは、アメリカのダニエル・スティール 。彼女もロマンス小説で知られています。日本でも『5日間のパリ』や『敵意』 などが広く読まれました。
7. ウラジミール・レーニン
ロシア革命を主導し、ソ連の初代の指導者となったウラジミール・レーニン にも多くの著書があり、20世紀の世界の政治に大きな影響を与えました。ロシア語からの翻訳件数は3593件で、主著には『帝国主義』や『国家と革命』などがあります。
8. ハンス・クリスチャン・アンデルセン
デンマークの童話作家、詩人のアンデルセン の著作の翻訳は3520。 「人魚姫」や「雪の女王」、「みにくいアヒルの子」などが『アンデルセン童話』としてまとめられ、世界中の子どもたちに読まれてきました。
9. スティーヴン・キング
アメリカが誇る作家スティーヴン・キング の著作の翻訳件数は3357。モダンホラーの第一人者として知られ、全世界で累計3億5000万部を販売、その多くが映像化されています。代表作は『シャイニング』や『キャリー』、『ミザリー』など。
10. グリム兄弟
アンデルセン同様、その童話で世界的に知られるのがグリム兄弟 。言語学者、文献学者としても知られる兄ヤーコプ・グリムの著作では、弟ヴィルヘルムとともに聞き取り調査を行い出版した『グリム童話』をはじめ、2977の翻訳があります。「白雪姫」や「眠れる森の美女」、「ヘンゼルとグレーテル」などは誰もが一度は読んだことがあるでしょう。
このユネスコのランキング以外でも、翻訳によって世界中の読者を獲得した作家は少なくありません。有名なところでは『ハリー・ポッター』シリーズのJ・K・ローリング などがいますが、74の言語に翻訳された『ハリー・ポッター』シリーズは映画化もされ、世界中で大ヒットを記録しました。
書籍翻訳サービス を利用して原稿を翻訳すれば、世界の読み手にメッセージが届けられます。可能性を言葉の壁に閉じ込めておくのが惜しい、そんな労作が翻訳によって花開くことだってあるかもしれません。