ビデオゲームをローカライズするときの注意ポイント
技術の進歩によって処理速度が格段に速くなったことで、ビデオゲームのグラフィックは映画かと思うほどにきれいになり、世界のプレーヤーがオンラインで集まってゲームをすることも可能になりました。ゲームがeスポーツにまで発展している昨今、話題性の高いゲームは世界中で人気を博しており、発売を待ち焦がれるファンもたくさんいます。ゲームも世界市場を視野に販売していく必要がある時代、ローカライズが不可欠です。世界中の市場に適応できるようにゲームをローカライズし、顧客を広げ(=ファンを増やし)、売上を伸ばしてみませんか。ビデオゲームのローカライズには難しい側面もありますが、実行するだけの価値はあることでしょう。
ゲーム・ローカライズのステップ
ゲームのローカライズを成功させるためには、幾つかのステップを段階的に進めていく必要があります。ターゲット市場を決めた後に進めるべきステップを以下に示します。
ゲーム翻訳
ゲームのスクリプト(台本)、ユーザーインターフェイス(UI)のテキストなどを翻訳します。この基本的なステップで正確な翻訳を行っておくことが、ゲームのローカライズを成功させるために重要です。
ボイスオーバー(音声)のローカライズ
ターゲット市場のプレーヤーに違和感のないようにボイスオーバー(音声)をローカライズします。
ゲームの中のあらゆる要素のローカライズ
ゲームのストーリーを構成する要素(キャラクターの名前、土地柄、武器、グラフィック要素など)やゲームを構成する他のさまざまな要素をすべてローカライズします。全要素を的確にローカライズすることによって、プレーヤーにとってそのゲームはよりリアルで親しみやすいものになるのです。
ターゲット市場に受け入れられない文化的要素の書き換え
ターゲット市場のプレーヤーには分かりにくい特定の文化に基づく描写や表現を、削除するあるいは分かりやすいように書き換えます。
ゲーム全体の外観
ターゲット市場の文化的ニュアンスに適合するようにゲーム全体の外観と印象を整えます。
細部への配慮
日付の書き方、長さや重さなどの単位、住所記載方法などの細部にも配慮したローカライズを行うようにしましょう。
技術コンポーネントなどのローカライズ
テキストファイルの操作方法やコーディングといった技術コンポーネントや、ポスター、パッケージ、ウェブサイトといった販促要素(マーケティングツール)のローカライズを行います。
ユーザーマニュアルの翻訳
ユーザーマニュアルや、ゲームを楽しめるようにするためのヘルプメニューなどの情報を翻訳します。
他地域向けのローカライズをする際の準備
後に、他の国や地域向けのローカライズを追加で行う予定であれば、さまざまな地域や言語、文化に適応できるような形でコードを書き込んでおくことも検討するとよいでしょう。
こういったステップを可能な限り良い状態で実行し、ターゲット市場でのゲームの販促を成功させるためには、ビデオゲームの翻訳・ローカライズに豊富な経験を有する翻訳会社や言語ザービスプロバイダー(LSP)に相談するのも一案です。
ゲーム・ローカライズのメリット
ゲームをローカライズするにはさまざまな作業が発生し、簡単ではありませんが、それでもローカライズを行うメリットは大きいと言えます。一例をあげると、タワーディフェンスゲームの「Defender’s Quest」は、6言語(英語、ドイツ語、チェコ語、ロシア語、韓国語、日本語)にローカライズされ、英語圏以外での売上が全体に大きく貢献しました。対象言語が発売される前と後とではゲーム市場に占めるDefender’s Questの割合に変化が見られたのです。日本は特に差が大きく、日本語版がリリースされる前の1.04%からリリース後の5.69%と実に5.47倍にも増加していました。
以下にビデオゲームをローカライズすることによって得られるメリットを書き出してみます。
- 売上を増やす
新たな市場でビデオゲームが売れれば売上は増えます。ビデオゲームは人々の娯楽として人気が高いので、ターゲット市場向けにローカライズされたゲームは、プレーヤーを引きつけることができるはずです。
- ダウンロード数を増やす
パッケージ販売でなくてもダウンロード数が増えれば売上増につながります。そして、ダウンロード数が増えれば、人気も高まるでしょう。
- 競争力を維持する
ターゲット市場向けにローカライズして投入する製品数が増えれば、該当市場での競争力が高まります。ローカライズされたゲームは、されていないゲームより、市場で優位な位置を獲得することができるのです。
- プレーヤーに好まれる商品の提供
人は自分の母国語で物事を進められることを好み、それは娯楽、ゲームでも同じです、
- アプリストアのランクで上位に立つ
ゲームをローカライズすることで、ターゲット市場のアプリストアのランクの上位に入れる可能性が高まり、その結果として露出が増えれば、より多くのプレーヤーにゲームの存在を知ってもらうことができます。そして、それは売上にもつながります。
ターゲット市場はどこか?
ビデオゲームをローカライズすると決めたら、次に重要なのはどこをターゲット市場とするかです。選択の参考までに、市場調査会社Newzooによる2020年の世界ゲーム市場における推定売上ランキングTop10の国を紹介します。
- 中国
- アメリカ
- 日本
- 韓国
- ドイツ
- イギリス
- フランス
- カナダ
- イタリア
- スペイン
加えて、これらの国をターゲット市場とするか検討する際には、次のことにも考慮してください。
- ゲーム市場は成長を続けており、今後も高い成長率が維持されるとして2020年には1,593億ドル(年成長率9.3%)、2023年までには2,000億ドルに達すると推測されている。
- ビデオゲームは世界中の老若男女に楽しまれているが、2020年、世界のビデオゲーマーの分布が一番多いのはアジア太平洋地域の約150億人とされている。
- 市場規模を地域別で見ても中国がアジア太平洋地域を牽引している。国別データでは、2018年には714億ドル、割合にして52%を占めていた。
- 今年、新型コロナ感染症(COVID-19)の感染拡大にともなうロックダウンの影響がゲーム市場の成長を押し上げており、調査でもCOVID-19が原因でゲームプレイ時間が増加したことが明らかになっている。
このように、ゲーム市場の成長は続くと見られているので、ビデオゲームを開発しローカライズした上で世界市場に展開していくのに最適な時期と言えるでしょう。