ウェブサイトをローカライズするための5ステップ
eコマースの市場分析によれば全世界で20億人以上(2021年時点)がオンラインで製品やサービスを購入している現在、ウェブサイトのローカライズは、企業が世界市場に進出する上で不可欠です。サイトをローカライズすることで、より多くの人に情報を届け、SEO(検索エンジン最適化)を向上させ、新規顧客を獲得することが可能となります。
ここでは、ウェブサイトのローカライズ実現のために必要な5つのステップを紹介します。
ローカライズ戦略を策定する
ウェブサイトをローカライズするための最初のステップは、以下の要素を含めた戦略を立てることです。
- どの言語や地域をターゲットにするかを決定するための市場調査を行う。対象市場でどの程度売れそうか、商品・サービスが対象地域の文化、さらにその地域の人の全体的な購買行動に合っているかを調査する。
- 多言語SEOへの対応策を立てる。キーワードの選定、メタデータの翻訳、hreflangタグの設定などを行います。hreflangタグはウェブサイトがどの国の言語や地域向けに作られているのかを示すものなので、日本語ページしかないウェブサイトでは必要ありませんが、多言語サイトはそのサイトがどの地域・どの言語をターゲットとして作られたものなのかを明確にする必要があるためhreflangタグが必要です。
- ローカライズ作業の責任の所在を明確にしておく。作業を委託する翻訳会社・言語サービスプロバイダ(LSP)を含めて、プロジェクトマネージャー、翻訳者、デザイナー、開発者、マーケティング担当者といったローカライズ作業を担うメンバーの責任範囲を確認しておきます。
ローカライズを踏まえてサイトをデザインする
ウェブサイトのデザインを作る段階から、多言語サイトにローカライズすることを踏まえておくことが重要です。多くのことに配慮し、複数言語へのローカライズが可能になるようなサイトデザインを考えておきましょう。言語にかかわらず使えるレイアウトやデザイン、テキストの増減にも対応できるデザインにしておきます。例えば、英語から日本語のような文字表記(シングルバイトからダブルバイト)や言語体系が全く異なる言語(例:アジア言語)に翻訳する場合と、英語からドイツ語のように言語体系が同じか類似の言語に翻訳する場合では、訳文の分量に差が生じ、表示するのに必要なスペースやレイアウトに大きく影響してきます。また、文字を書き進める書字方向(縦書き・横書き)が異なる言語もあれば、横書きの中でも書字方向(左横書き・右横書き)が異なる言語もあるので、言語に応じた記載ができるように柔軟性も要求されます。
ウェブサイトのローカライズをアウトソースする際には、将来の事業成長も踏まえたサイト設計ができる技能を持つ会社を選ぶべきです。
国際化を前提にサイトを設計する
ウェブサイトの構築においては、特定の国や地域、文化だけに通用するような要素を除きつつも地域に受け入れられるように、国際化を前提としてサイトを設計することが大切です。ソフトウェアの設計の初期段階や開発プロセスでは世界展開を見据え、ターゲット言語ごとのさまざまな設定に対応するためのコーディングにしておきます。そのためには、プログラミングを大幅に変更することなく、新しい言語に自動で書き換えられるプレースホルダーにコーディングにしておくことも求められます。
また、タイムゾーン、日付、通貨、数字の表記など、言語や国・地域で書き換えが必要となる要素も簡単に変更できるようにしておきます。
コンテンツを翻訳する
ローカライズでは、サイトコンテンツの正確な翻訳も不可欠です。これを実現するためには、ターゲット言語のネイティブスピーカーの翻訳者を起用します。翻訳者が語学を理解するだけでなく、どのような記載がウェブサイトで文化的に許容されているのかを敏感に感じ取れることが必要なのです。
また、コンテンツの効率的な管理および体系化ができる高度な翻訳管理システムを持つ翻訳会社と協業することも重要です。
適切なグラフィック、画像、動画を選択する
ウェブサイトに掲載する文字情報以外の情報、すべての画像(ビジュアルコンテンツ)も文化的に適切かを慎重に見極める必要があります。ある文化圏で受け入れられた写真が、別の文化圏で同じように快く受け入れられるとは限りません。ウェブに埋め込む動画も、それが地域の顧客層に響くか、またその内容が文化的に適切かを鑑みて選ぶ必要があります。
ローカライズの成功例
サイトをローカライズすることで事業に成功した企業は数多くあります。コーヒーを焙煎するための機器とサポートサービスを提供しているBurns Industrial Coffee Roastersは、ウェブサイトを9カ国語(英語、スペイン語、韓国語、ポルトガル語など)にローカライズし、世界展開を進めています。このプロジェクトでは、新しいウェブページの設計とパートナーゲートウェイ(Partner Gateway)の割り当ての追加、製品ビデオ、仕様書、カタログ、問い合わせフォームの埋め込みを行いました。Burns社は、各ローカライズサイトのSEO対策や、ソーシャルメディアでの発信強化にも力を入れました。これらの作業を行ったことで、多くの新規顧客を獲得するとともに、世界各国のユーザー/顧客への情報提供を大幅に向上させることに成功しています。
2040年には買い物の95%がオンラインで行われるとも推定されており、ウェブサイトをローカライズすることは企業の成長戦略上、ますます欠かせないものとなることでしょう。継続的な成長を目指すには、多言語サイトのローカライズに関する知識と経験を持ち、あらゆる面を完全に掌握できるプロジェクトチームの編成が可能な翻訳会社/言語サービスプロバイダと連携することをお勧めします。