NPO法人
NPO法人からの依頼により、産婦人科等の医師の研修用テキストブック(10万語以上)を日本語に翻訳
- サービス名: WEBサイトの翻訳・ローカリゼーション
- サービス名:書籍翻訳
- 言語:英語から日本語に英和翻訳
- 分野:婦人科、医学、周産期
- 単語数:11万4192単語
背景
ご依頼いただいた法人は、 周産期医療支援を行うNPOの中でも、産婦人科、小児科、救急医療といった分野における医療スタッフや診療科の不足や地域による医師数の格差の解消を目的とした非営利団体で、妊娠・出産および新生児ケアなどの医療分野で働く医師・看護師といった医療従事者、およびそれを目指す学生に対し研修を行っています。こうした活動により、医療と社会福祉の向上そして子どもたちの健全な育成を図る組織です。
出生前のリスク評価、妊娠初期の出血、患者と医師の関係、出産時における両親のサポート、医療過誤のリスク低減などに関わる支援を提供しているこのNPO法人が、周産期医療支援に関する書籍の日本語版を作ろうとしていました。そこで産科学、婦人科学、小児科学、救急医学などの複雑でニッチな分野に精通し、それを日本人に分かりやすく魅力的に発信できる翻訳会社を探していました。
翻訳では文化的な背景の理解や異文化への配慮が求められます。正確であっても、文化的に適切でない部分があれば、翻訳全体が台無しになります。また、医学の翻訳は専門性の高い分野であるため、文法的な正確さだけでなく専門用語の正しい選択も求められます。ですから、お客様は、婦人科、産科学の医学用語についての豊富な知識を持つ翻訳者による作業をご希望でした。幅広い翻訳者ネットワーク、そして厳格な採用プロセスにより、クリムゾン・ジャパンはこのようなお客様のニーズにお応えしました。
課題
4人のチェック体制で11万4192単語の翻訳を67日間で納品
お客様の希望は日本語版書籍の迅速な出版11万4192単語の原文を、翻訳、翻訳チェック、日本語編集という3段階プロセスを経て日本語版の原稿にするまでの時間は67日でした。
周産期医療を専門とする日本人翻訳者の採用
通常このような大がかりなプロジェクトでは、まずお客様にトライアル翻訳を提供し、お客様に、ふさわしい翻訳チームを選んでいただきます。この本に関しては納期が非常に短かったため、トライアル翻訳をチェックしていただく時間はなく、クリムゾン・ジャパンでお客様のニーズに合う最適な人材を選出しました。
同じ意味をあらわす別の語句の適切な翻訳
医学翻訳が他の技術翻訳と異なるのは、複数の語句が同じ意味をあらわす場合があることです。英語の場合、体の部位や疾患などの多くが、専門的な医学用語と一般の人々が使う日常語で異なる呼称を持つのです。たとえば、「胸部」をあらわす「thorax」と「chest」、「百日咳」を意味する「pertussis」と「whooping coug」などです。どの単語が同じ意味で使われ、どのようなニュアンスで用いられているかについて把握することは、専門的な知識がなければ容易ではありません。
プロジェクトの全貌が分かると、作業の複雑さも見えてきました。最終的なゴールが書籍の出版であったため、チーム全体で緊密に連携し、翻訳文の単語レベル、文体レベルでの一貫性が必要でした。
文法的、文化的、専門的見地から適切な日本語の選択
このプロジェクトには、一般的な技術翻訳以上に多くの課題がありました。対象分野の専門知識を元に、文化的配慮をした高い語学的精度の日本語原稿の作成が求められていました。
日本語版に挿入する写真・図表の管理
書籍では、テキストボックスを含む多数の画像が使われていました。画像内で、表示位置の関係から文字列が隠れてしまっているものなどもあったため、そうした文字列の処理にも注意を払う必要がありました。
クリムゾン・ジャパンのソリューション
15年以上の業務経験を持ち産婦人科分野を専門とする翻訳者を選任
医学翻訳を正確に行うには、その分野の知見が必要です。そうした知見を持つ専門の翻訳者の作業を、厳格な品質管理プロセスで管理することで翻訳の精度を最大限に高めます。
クリムゾン・ジャパンでは、特に医学翻訳においては、分野の専門知識が何よりも大切であると考えています。医学分野だけでも、さまざまな領域の専門知識を持ち、読み手やその読み手の文化を理解する翻訳者・校正者が在籍しており、その分野を専門とするターゲット言語のネイティブスピーカーにご納得いただける翻訳を提供しています。
クリムゾン・ジャパンではあらゆる領域の医学翻訳を行っているため、依頼を受けた時点で、プロジェクトの担当者に必要な専門知識や経験を判断することができます。今回は、「産婦人科」に関する知識全般、そして薬剤の正確な日本語名や日本市場での使用状況なども熟知している翻訳者の中から最もふさわしい人材を選び、専門性の高い翻訳チームを編成しました。
対象書籍に最も適したチームを選ぶ独自アルゴリズム
クリムゾン・ジャパンでは、プロジェクトごとにそれにふさわしい翻訳者・校正者の候補を自動的に選出する自社開発のツールを使用しています。プロジェクト管理ワークフローシステムに組み込んだ独自のアルゴリズムで最適なスキル・知識・経験を持つ担当者候補を抽出し、さらに選抜をしてチームを編成します。
いくつもの段階で、ダブルチェックを実施
ターゲット言語とソース言語である和英両言語の能力と対象分野についての専門知識がプロジェクトの遂行には必須でした。特に医学用語に関し、日々新しい情報に接している翻訳者に担当させることで、最新情報に即した質の高い翻訳を実現しました。書籍として刊行するわけですからミスは許されません。また、締め切りが迫っていたため、15年以上の経験を持つ医学博士や「産婦人科」の博士号取得者など複数の担当者が選ばれました。これにより医療関係者にとって正確で納得のいく翻訳を、専門書の体裁に整えて納品することができました。
担当者は内容を正確に把握した上で、日本のこの分野の専門家や医療関係者が使用する用語に最終的な文章を落とし込みました。
高度な専門的内容をタイトなスケジュールで日本語にするという状況で、確実にミスのない作業を行うために、各段階で、翻訳者とチェッカーが訳文をダブルチェックするという体制を取りました。これに加え、社内校正者による校正・校閲により最終的な原稿を読みやすい日本語へと仕上げていったのです。
こうした担当者の作業を、プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャが管理することで、業務を滞りなく進めることができました。
専門用語の用語集の作成と使用
医学に関する論文や書籍には専門用語が頻出し、翻訳の際にはそれらを、いかに正確に翻訳するかが非常に重要になります。翻訳者は病気や治療法、医薬品などに関連した用語や、医療についての知識を持っていなければなりません。
このプロジェクトではお客様は用語集をご用意されていなかったため、私たちは最先端の翻訳ツールやMedDRA等の医学用語集などを活用しつつ、社内で独自にプロジェクト専用の用語集を作成し、翻訳チーム全体でこれを共有しました。特に翻訳チェッカーは、この用語集に即して書籍全体の用語統一を行っていきました。
用語集の作成といっても、専門用語と辞書に載っている用語の対照表を作るだけではありません。これまで訳語のなかった用語を新たに作り出す、日本の医療関係者の語感にあった訳語を選ぶ、あるいは英語の単語をそのまま使用するなど、現場への理解に基づいた複雑な作業を行いました。
お客様に合わせたワークフロー
このプロジェクトでは、規模や納期の短さを鑑みて、完成した翻訳原稿を一度に納品するという通常のワークフローではなく、1章ごとにプロジェクト管理チームがお客様に原稿を納品しチェックしていただくというフローで作業を行いました。納品した章をお客様のコメントに従って修正し、以降の作業でもお客様が希望される文体やトーンへの調整を行っていきました。お客様との間で緊密なやり取りを行うことで、こうした作業は可能になりました。私たちの質問に対して丁寧にお答えいただき、私たちの提案に対すし柔軟に対応いただけたことでスムーズな作業フローが実現しました。
日本語版原稿にあわせた図表の調整
提供された文書に含まれていた多くの図表を、翻訳チームは細心の注意を払って扱いました。図表のサイズに合わせて、図表内の文字列のサイズも変わってしまうため、文字情報の見落としがないよう気を付けるだけでなく、訳文の文字数への配慮も必要だったのです。翻訳チームが慎重に処理した後、ファイルを受け取った後、プロジェクトマネージャがさらに入念にチェックして、納品原稿の図表に問題がないことを確認しました。
通常より36%速い納品
このプロジェクトで最も大きな課題のひとつが、お客様ご指定のスケジュール内での納品でした。内容の専門性を考慮すると、通常のやり方では、迅速な納品を行うことは困難です。品質チェックや、お客様からのフィードバックへの対応などのため、優秀な人材を多数選任することにより、私たちは高品質の翻訳原稿をお客様のご希望通りにお納めすることができました。通常、この規模でこの内容の翻訳に要する期間は17週間のところを、11週間で納品したのです。
プロジェクト概要まとめ
- 15年以上の経験を持つ周産期医療専門の翻訳者
- 通常より 36%早い納品
- 訳語の統一、全体の品質を保持するための専用の用語集の作成
- 完成した章ごとの納品による、お客様からのフィードバックの反映
難しいテーマと内容にもかかわらず、クリムゾン・ジャパンは膨大な分量の翻訳を、通常より何週間も速く、そしてとても高い品質で納品してくれました