人類学の日本語文章校正サンプル
本稿の目的は、現代の狩猟採集社会、またはポスト狩猟採集社会における居住形態に影響を及ぼす短期的な社会的要因を明らかにし、それがどのような関係にあるかを考察することである。具体的には、カメルーン南東部のバカ(Baka)の社会の居住と移動の具体的な様相とその社会的な要因が、筆者のフィールドワークで得られたデータに基づいて示す。次に、集団内と集団間に分けて、居住様式に影響を与えている社会的要因が明らかになった。その上で、居住形式の変化を中長期的、短期的に考えた場合の、短期的に発生する社会的要因の性質について考察する。
これまでの狩猟採集民研究で、「移動性(mobility)」は主要な課題の一つであり続けてきた主として生体学的な観点により、狩猟採集民における通文化的研究や考古学モデルがアプローチされてきており、ある環境において集団を維持できる人間の最大量、すなわち環境収容力に基づいて引き出されており、進化論的な説明であった。例えばRobert Kelly(ロバート・ケリー)は、流動的か定住的かにかかわらず、分析対象に狩猟と採集に依存・生活している人々を選び出し、通文化研究的な視点から狩猟採集民の居住―移動モデルの構築を試みている(Kelly 2013)。